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    その辺のR

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    その辺のR

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    ほろスコの本編1話。プロローグともいう
    二人が出会う時の話。

    正確には1話+追筆(1.5話)を雑にくっ付けただけの突貫品で仕上げなしの原文そのまま。ちなみにこれを書いたのは半年前(*24年7月末)

    星座盤 日が沈み辺りも暗くなってきた頃、友人と別れ少女は一人の帰り道。
     もう家はそう遠くないのだが、喉の渇きはそれすら惜しみ少々逸れた道にある自販機へ向かっていた。

     着くなり早速小銭を入れ目当ての物を選び、間もなく出されたのを確認し取り出そうとする。
    ──ガコンッ
     そんな矢先に何故か再び排出音が響いた。
    「……何これ?」
     不思議に思い目をやると、そこには明らかに飲み物とは到底思えない奇怪な物があった。
     一先ず自分の飲み物とそれを取り出し、数歩ズレて喉を潤した後にゆっくりと確認する。

     まるで玩具の様な見た目の機械だ。ただ一見しただけではどういった物なのか検討もつかない。
    (何かのキャンペーンとかそんな感じの……?)
     再び自販機に向かい今度は広告のラベルを次々に見ていく。
     だがしかし、何処にもそれらしい事は表記されていなかった。
     不審に思いどうしたものかと悩んでいると、画面が点灯する。
    「えっ何?これは……座標?」
     特に心当たりもなく突然起動した事に驚き、画面の意味を理解すれば今度は疑問符が浮かぶ。
    「ここに何かあるの……?何が……?」
     無視した方が安全だろう。既におかしな状況なのに、これが何かの誘導や厄介事なら尚のこと。

    ──けれども、不思議と『ここに行かなくては』という気持ちが、或いはただ好奇心が勝ったのかもしれない。
      
     どうせ大した距離でもない。少女は標どおりにこの場所へと向かう事にした。

    ────

     いざ着いた場所は現在使われてない……近所に住んでる者にすら元の姿を忘れ去られたコンクリ製の廃墟。
    (え〜っ……。嘘でしょ?ここの中なの?)
     当然立ち入り禁止を示されていて少女は躊躇いから立ち尽くしていた。
     しかし座標は変わらずこの中を指し進行を促している。

    (……ええい!ままよ!!)
     幸いにも辺りは暗くザッ見渡せば人の気配もないのを確認すると、そそくさと中へ忍び込んだ。
     建物の中まで入ってからスマホのライトを点け探索を開始する。
    (バレたらどうしよう……怒られるのは嫌だなぁ……)
     若干ビクビクとしながら進んでいく。なるべく気配や音を潜めて。
     本当ならライトだって消したいと言わんばかり存在を無いものにする事に尽力していた
     
     この建物に入ってからというもの、座標は最早あてにならなかった。
     ずっと中心を示すばかりでこれ以上は正確な場所が分からないのだ。
    (拡大とか何かない?どう弄れば……)
     明かりを機械の方に向けてもう一度よく見ようとした時──微かに物音がした。

     いや、耳をこらしてよく聞けば呻き声にも聞こえる。
    (誰か居るのか?えぇ…………それは嫌……)
     露骨に顔を歪めてげんなりし始める。
     だが、本当に"誰かの呻き声"であったなら。
     そう悠長な事を言ってはいられない可能性だってあるかもしれない。
    (実際何なのかも気になるし……。一応確認だけでも……)
     いざとなれば逃げればいい。より気配を殺しながら音源へと距離を詰める。
     段々とハッキリ聞こえ始め、荒い呼吸音だと分かれば少なくとも生物である事を確信させる。
     それに観念した様な気持ちで素直に歩き始めると程なくして──

    「……誰だッ!!」

     威嚇する様な低めの怒声が響き渡る。
     しかしどこか苦しげに言うものだから、一瞬派手にビクついた少女の歩をより早める結果となった。
    ──ガチャリ……
     返事もせず近付いたせいだろうか?何かを構える音がして思わず足が止まる。
    (恐らくあの角を曲がった所……)
     音の方向へライトを向けたが、案の定姿を確認する事は叶わなかった。
    「あの、大丈夫……ですか?」
     オドオドと声掛けて待つが、何の反応もない。
     しん、とした静寂には緊張の糸が張り巡らされている。
     膠着状態、先に痺れを切らした少女が再び問う。
    「何か、あったんですか?そっちに近付いても、平気ですか……?助けとか必要だったり……?私でよければ手を貸しますけど……」

    「……お前は誰だ」
     ゆっくりと問いかけ続けると、警戒心こそ剥き出しだが先程よりは幾分かマシな声が帰ってくる。
    「私は、南出ほろかといいます」
    「……人間か?ならアプリドライヴァーか……」
    「アプリ……?すみません、よく分からないけど違うと思います」
     少女は気まずそうにするが、そんな事知る由もない声の主は続けざまに問いただした。
    「アプモンである俺を認識出来ているなら、ほぼ間違いなくアプリドライヴァーだろう……。手持ちサイズの機械、何か心当たりとかないか?」
    「あー……確かに先程。よく分からないまま此処まで持ってきちゃいましたけど……」
     手元のそれを見ながら話せば、やっぱりなと答えが聞こえてくる。

    「あの、これがあれば貴方を助けられるんですか?」
    「……は?あぁ、まぁ……。確かな事は言えないが、そうかもしれない、のか……?」
    「じゃあ今そっちに持って行きますね」
     おい、待て、という制止も聞かずに進んだ少女が曲がると──その正体は照らし出される。

    ────

     グッタリと壁に凭れ掛かっている影は光に当てられると夜闇から切り出されたようだった。
     眩しそうに細められた左眼は切れ長で紅く、右眼から右腕が特にゴテゴテとした全体的にイカつい武装。
     それらだけでも威圧感を感じさせるのに、パッと見て解る"人ならざる者"ときた。

     彼は事前に『自分はアプモンだ』と人でない事を言いはしたものの、いざ実際に人目に写ればどうなるか?
     元々愛想がいいとはとても言い難い。ましてや初手から怒鳴りつけたなど印象は最悪だろうに。
     怯え逃げ出すだけならまだいい。一心不乱に暴れられてはたまったもんじゃない。ただでさえ激しく消耗していて余裕が無いのに。
     そう逡巡していた心中など微塵も知らない少女が、予想通りにあっと驚きの声を上げた。

    「ごめんなさい!いきなり眩しかったですよね!配慮が足りませんでした……」

     駆け巡っていた思考と焦りは杞憂だった事を知らせる様に、優しい声と言葉が彼へ降り注ぐ。
     慌ててはいるし、何処かぎこちない態度でもあるが、平静さを取り繕うには自然体にすぎる気がした。
     少女の予想外の反応に彼の方が混乱してしまう。
    「えっと、それでこれはどう使えばいいんですか?」
    「……お前、恐くないのか?」

     ポカンとした顔で首を傾げ、てんで理解できていない様子に思わず失笑しそうになった。
    「バッテリーでいい。持ってるか?」
    「それなら確か……あったあった。はい、どうぞ」
     鞄を漁った後、モバイルバッテリーと共にコードを取り出し「この端子で使えます?」と一言添えながら差し出してきた。
    (変わった奴だな……)
     軽く礼を言いつつ受け取ると、早速使用し回復に努めた。

    ────

     その間少女は心配そうにソワソワと、でも少し不思議そうに、しかし忙しなく目を動かしてはチラチラと見やるばかりの何ともこそばゆい視線。
     堪らず彼も落ち着きを欠きそうになるが、ある程度復調してきたのを理由に充電を止めて返す事にした。
    「助かった。もう大丈夫だ」
    「本当に……?アプモンでしたっけ?これでもう大丈夫なんですか?」
     心配しながらも不思議……と呟く形で好奇心が漏れ出ていた。
    (お前の方がずっと不思議だろ)
     と思ったが、口には出さずその胸中に留められた。
    ──突如、床に置かれたアプリドライヴから音が発せられる。
     図らずも同じタイミングで見るとこんな文言が表示されていた。

    【悔いはありませんか?】

     その他には『YES』と『NO』のボタンが表示されているだけの画面に少女は困惑を示す。
    「どういう事……?」
    「…………」
     対照的に彼は驚くばかりで、何を言う訳でもなく画面に釘付けになっていた。
    「えっと……これってどうすればいいとか、分かります?」
     おずおずと質問されハッとしたと思えば、今度は少女の顔をまじまじと見つめ始めた為に返事が先延ばしになる。
    (こいつが、俺のバディ……?いや、まだ分からないか)

    ────

     静かに返事をじっと待つ少女の目は徐々に戸惑いで揺れを強めていく。
    (何か不味い事になってたり……?よく分かんないけど大丈夫かなコレ。もしかして今ヤバい状況?いやでもその割には焦り?とかなさそうだし、何……??)
     グルグルと不安と気まずさで思考が混ざり、目を合わせているのが辛くなってきた頃。
     漸くまとまったのか、彼はゆっくりと説明し始めた。
    「これは、バディを組む時に出てくる質問だ……」
    「バディ……?」
    「あぁ。人とアプモンとの絆がどうとか聞いた事はあるが……俺には無縁だと思っていたからあまり詳しくは知らん……」
     へぇ、と言えばお互い今一つピンときてない顔でもう一度アプリドライヴを一緒に見る。

    【悔いはありませんか?】

    「……私は構いませんけど、貴方は私とバディ組んでも良いんですか?」
    「は??」
     あまりにもサラリと言う少女と素っ頓狂な声を上げる彼との間の温度差を感じさせる問答が始まった。
    「嫌ならNOを押せばいいって話ですよね?違うんですか?」
    「いや。どうも質問は各自で違うとか、更に必ずしもYESとは限らないだとか。まぁ実際どうなんだかな……。だが、そんな、お前…………」
    「後々嫌になっても解消とかすれば良いって話じゃないんです?バディって相棒の事でしょう?ならその時はその時なんじゃないですか?」

     軽い調子で語る少女に頭を抱えたくなっていた。
     そういうもんだと言えば確かに一理あるだろうが、本当にそれでいいのか?今までその辺を蔑ろにしてきたツケが回ってきたとでも言うのか?

     考え込んで唸る彼を暫く見つめていた少女だったが、やがて口を開く。

    ────

    「……あの。私は正直よく分からない、とは言い訳だろうし、結果的に丸投げにはなるのはアレかもしれませんが……」 
     ポツポツと零すように一つずつ吐露していく。
     何の助け舟にもなりやしないし、余計に困らせてしまうかもしれない。だが、せめてこれだけは、とじっくり言葉を選びながら紡がれていった。

    「バディになるにしろ、ならないにしろ──それってつまり一人で決めるもんじゃあないでしょう?だから、私は、貴方に決めて欲しいんです」

     まぁしっかり考えるに越したことはないと私も思うのですが、と最後に苦笑と共に添える。
     少女は決して人付き合いが得意な方ではない。
     話す事自体に問題はないが、あくまで聞き役に徹する為に自分からはあまり話したがらない。
     特別親しい人以外は関わらないで済むならその方がいいとさえ思っている。

    ──けれども、彼は不思議と話しやすいのだ。

     話しぶりこそガチガチに堅いものだが、これでも少女なりに肩の力が抜けていた。
     初めて会う筈なのに何故かスラスラと言葉が出てくるのが、少女にとっては不思議で仕方ないのだ。
     そもそも、自分から関わろうと、関わりたいと思えるのが何故なのか気になって仕方ないのだ。

     だからこそ、そんな"不思議"に気まぐれな賭けをするのも悪くないと思えたのだ。

     どれだけ伝わったかは少女には分からない。
     だが確かに彼を動かすに足る言葉だったのだろう。少しの間を置くと、恐る恐る尋ねてきた。
    「……本当に、俺でいいのか?」
    「いいですよ。それで、貴方は?結局どうなんです?」
    「その時はその時、なんだろう?」
     初めて笑った、かな?とこちらも笑顔で返しながら──

     希望を込めて『YES』を押す事にした。

     少なくとも、私はこの出会いを悔いる事がないだろう、とは口に出さないものの少女は漠然としたそう予感していた。



    ──────
    (※以下後付け)


    「ところでお名前はなんと言うのです?」
    「そういえばまだ名乗ってなかったか……。俺はスコープモンだ」
     スコープ、と一度声に出して呼んでみる。何故か妙にその名を繰り返したくなり、胸の内で幾度か復唱していた。

     そんな事をしながら彼をぼんやり見ている内に、段々と顔に困惑の色が浮かんでいく。
     それが何だか面白く思えるが、もう少し見ていたいと惜しむ気持ちをかき消す様にとりあえず口を動かす。
    「私も、改めて名乗りましょうか。南出ほろかです。よろしくお願いしますね」
    「……お前、その喋り方は素なのか?」
    「えっ、まぁ。別に常に敬語って訳じゃないですがね。一応今も比較的自然体ではありますが……堅苦しいですか?」
    「ただ気になっただけで嫌な訳じゃない。何となく聞いただけだ」

     ……こう見ると割と強面なのかな?元々鋭い目だからかちょっと怪訝そうにするだけでこわい顔になってくし。
     いやまぁ、本当に恐いと思ってる訳じゃないけど。
    「敬語じゃない方がいいですか?タメ口で構わないならタメで喋りますけど」
    「好きにすればいいとは思うが……。その方が気が楽かもしれんな……」
    「じゃあ、そのように……させてもらうね?」
     急に切り替えられるほど器用じゃないせいで何とも変な言い方になってしまい恥ずかしい。
     スコープも思わず吹き出している。思わず頬に手をやってしまったら余計目が笑っていくし!あぁもう。

    「無理にすぐ変えなくてもいい。とりあえず気を遣うな。お前のやりやすいようにすればいい」
    「あ、ありがとう……」
     優しい言い方が余計に滲みた。何もかもが空回りしていく。気を許した途端一気に調子が崩れていく。
    「さて、これからどうする?俺はお前についていくだけだが」
    「えっ、私は家に帰りますけど」
    「そうか」
    「……えっと?あの、君は……?」
    「?お前についてくと言った筈だが……?」

     疑問符が散らばる。何か、大事な事を確認し忘れたかもしれない事に気付き焦りが湧いてきた。
    「あの、もしかしてバディってこう、お友達とかその延長とかそういう感じじゃ……?」
    「……。基本一緒に行動するもんだと思うが……」
    「それはその、例えば君の家は今日から私の家になったりする?」
    「そういう事になる、筈だが」
    「…………」

     水を打ったように静まり返ってしまった。
     どうしよう、早々に想定外の事態に見舞われて非常に不味い空気になり始めてる。
    「……なぁ、本当にお前のバディになって良かったのか?」
     さっそく後悔させかけている事実に対し申し訳なさが津波のように押し寄せる。違うんです!!
    「いや、それとこれとは別なのですが、その、どうしよう……。いきなり君を連れ帰ったら、みたいな……?」
     もし仮に生活を共にするにしても、私はアプモンという存在を私は知らなさ過ぎる。
     その旨を伝えてみると、どうやら納得してくれたようで強ばった雰囲気が和らでいく気がした。
    「成程。それなら……」
     と一つ一つ疑問に答えていく彼の言葉に耳を傾けた。
     
     一通り聞き終えた後、特に問題が無さそうな事が確認できるとお互いに安堵した。
    「あ〜焦った……。じゃあ今度こそ帰りますか〜……」
     緊張感から解放された途端に今まで時間を忘れていた事に気付き、スマホで確認する。
     思ったより遅くなってしまったが、まぁいいか等とのんびり考えながらスコープを連れてその場を後にした。
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