出会えた奇跡に祝杯をその人物が産まれてきたことを寿ぐ行事であることは本から知識として得ていた。
知識としてしかわからなかった。
生家ではそんな風習がなかった。初等教育学校に通っていた時でも私の生誕が祝われたことはなかった。
家を出て魔法警察学校に通って、アレックスにはじめて言われたのだ。
誕生日おめでとう、と。
なぜそんなことを言うのか私にはわからなかった。
「歳を重ねることの何がおめでとうなんだ」
つい、そう疑問を投げかけてしまったことを思い出す。
アレックスはきょとんと目を丸くすると、あの良く通る大きな声で言ったのだ。
「先パイと会えて嬉しいからっす!」
論理が破綻していると思った。何故、私と会えて嬉しいのが生誕を祝う言葉に繋がるのか私には全くわからなかった。
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