無題夏。訓練の合間に二人は基地近くの海岸で星空を見上げる。街の灯りが遠いこの場所で天の川を眺めながら、神田はふと口を開く。
「なあ、栗。俺、最近お前の声聞いてると、なんか落ち着くんだよ」
「……それは、ナビゲーターとして嬉しいが」
「いや、そうじゃなくてさ……」
言葉を濁す神田。栗原もまた、神田の無防備な笑顔や、危険な任務でも自分を信じてくれる姿勢に、心が揺れていた。だが、1980年代の日本では、同性同士の恋愛は公に語られるものではなかった。自衛隊という男社会ではなおさらだ。
ある夜、訓練後のロッカールーム。神田がシャツを脱ぎ、汗に濡れた背中を見せる。栗原は視線を逸らすが、心臓の鼓動が抑えられない。神田が近づき、冗談めかして肩を叩く。
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