流れ星はまだ巡ってる。
どこから飛んできたのかも分からねぇ因縁を背負ってさ。
夜更けの会話なんて、
起きてる方が時流を読めるやつってもんだ。
酒好きなんて、見方次第じゃろくなもんじゃない。
酔い潰れて何もかもに当たるか、
ベロベロに酔って口論になるか、そのどっちか。
あいつはさ、普段ならどうってことない。
笑うと目が細くなるのが、めちゃくちゃ可愛い。
でも、ちょっとでも酒が入ると、
もう何がなんだか分からなくなっちまう。
もう「いい子」じゃねぇな、なんて思いつつ、
変だよな、
飲みたいって言うあいつに、俺が折れたのも。
で、結局は酔い潰れて、
グダグダ言って、床でぐったりして、
俺が抱えてベッドまで運んで――
で、死んだように眠る。
俺?
どれだけ飲んでも、酔えねぇよ。
人生がさ、
だんだんと“過去”って夜に閉じられようとした時、
あいつの頬にはもう、
あの“女の子の色”はなかった。
命張って守ってきたその人は、
今じゃ冷たい目で、剣をこちらに向けてくる。
見えねぇところで咲いてたんだな、花は。
血は逆流して、脈の中でうねるだけ。
いつの間にか、
あいつはもう、
“俺だけのあいつ”じゃなくなってた。
……でもやっぱ、酒ってやつは
人を妙に乙女っぽくさせる。
テキトーに瓶を選んで口にしてさ、
どうせ酔うのは俺じゃねぇし。
二言三言、
それだけで顔真っ赤にしてんの。
……俺の言葉、
少しでも届いてたのかよ、あいつに。
(***) 補足(作者注)
これは現代AU。
クーロンは前世の記憶を持っているが、リンはどうか分からない。
「人は死んだら星になる」という言い伝えをもとに、
クーロンとリンの「星」は転生して、また巡り合ったという設定。
「頬の女の子の色」という表現は、
『尾てい骨の眼にある昔の日々』という文芸評論の中の
「少女は十三歳で、まだ頬がほんのり赤い“女の子の色”をしていた」
という一節から着想を得たもの。
この「女の子の色」はリンのことで、
その次の一文はクーロンの感情を表している。
つまり、好きな人を目の前にすると、あのクーロンでさえも
どこか照れくさくなってしまうって意味。
「人生がさ、だんだんと“過去”って夜に閉じられようとした時〜」から
その後の一連の段落はすべて、過去の出来事を指している。
「見えないところで咲く花、血は逆流する脈の中で」
という描写は、リンがいつの間にか大人になっていて、
クーロンがそれに気づけなかったことへの後悔の表れ。
クーロンはリンを守るあまり、
彼がもう“自分だけの存在”ではなくなったことを、
最期まで理解できていなかった。
そして――
クーロンは太歳に取り込まれていたせいで、
“自分自身”に戻ることができなかった。
だが、死を迎えるその瞬間に、
リンの姿を見て、やっと本当の「自分」に戻れた。