「はぁ…」
「どうしたんですか、叶さん。恋ですね?」
ピキリと青筋が立つ。
オレよりも歳下で、だけれどオレよりも強いであろうこの仮面野郎は二言目にはオレをバカにする。
「違ェよ。しかも何で確信系だよ」
「そろそろ候補確保しとかないと将来もっと残念になりますよ」
「候補ってなn…おい待て。もっとって何だ。もっとって」
ニヤリと(多分仮面の下で笑ってる、分からないけど多分そうだ)笑った利亞を睨む。おー怖いなんて言って本当にオレを揶揄うだけのつもりだったらしい利亞は準備が出来た斗眞を連れて見回りに向かった。
「また玩具にされましたか」
「お前の言う事なら聞くでしょ、言ってやってよ。龍真」
「あの子は自由ですからね」
クスクスと笑いながら改造された《メチス》を手入れする為にオレの隣へ座った龍真はこの組の組長の息子だ。
所謂、若って奴だけど、ウチは身内で構成されてる組ではないし、組長も二代目だけど彼の父親は特攻隊長だったみたいだし。だからそれほどシガラミは無い。
「それよか、原因は未だ不明ですか」
「…まあ、嫌な予感なら一つあるけど。
考えたくないね」
ウィンドウを閉じて宙を仰ぐ。
原因不明の《マザー》消失。それの原因究明を仰せつかったのはオレともう一人の組員だったけれど。
「やる気ねェんだったら来なくていいんじゃん」
「…まあ、所属しているだけで政府から手当が支給されますからね。やる気が無くとも、ねえ?」
「…」
「酷い様なら組長に言いますが?」
「…いや、出来るトコまでやってみるしぃ…いざとなったらちゃんと言う」
「左様で」
ニコリと笑う龍真にオレはまたウィンドウを開く。別の組にいる知り合いからのメールに思わず口角が上がる。
「ねぇ、龍真」
「手伝いませんよ」
「何だよ、ケチ」
「貴方の仕事でしょう。僕には別の仕事がありますから」
「はいはい、分かりましたよ〜」
軽返事をしてメールに返信する。
ウィンドウを閉じる前に素早く返信してきた「了解」の文字に思わず胸が高鳴った。
「あまり無茶はしませんよう。苦言を呈されるのは僕ですから」
「大丈夫だって、仕事の範疇だよ」
そう言って手を振ったオレの耳に龍真のため息が聞こえた。さて、仕事しますか。