想いはいつまでもここはキノコ王国のとある丘。大きく壮大なピーチ城が見渡せるこの場所は、マリオとルイージの定番の昼寝場所だ。今日ものんびりと夢を見て、ゆっくりと目覚め身体を起き上がらせた。
「ふわぁ〜〜よく寝た…………?…………!?!?」
先に目覚めたルイージは、何かに気づき、うとうとした気分が一転し目を大きく見開き飛び上がった。隣で寝ているマリオを、動揺のあまり激しく揺さぶった。
「に……ににに、兄さん!!起きて!!」
「ん……?どうしたんだよ、そんな慌てて」
「ねぇ!あれ……あそこに居るのって……」
「誰が居るん…………だ……」
指差す方を見るとマリオもまた、ルイージと同じく目を見開いた。すると向こうにいた2人は兄弟に気がつき、駆け寄ってきた。
「マリオさーん!ルイージさーん!」
その正体は、1年前に兄弟のキズナで平和を取り戻したコネクタルランドにいるはずのコネッタとタップーであった。
「ルイージ〜〜!!会いたかったぞぉ〜〜!!」
「うわぁ!?」
タップーはルイージの胸に飛びこんだ。あまりの勢いにルイージはひっくり返ってしまった。
「タップー!ルイージさんすみません……」
「いや、大丈夫だよ。びっくりしたけど」
「2人とも、なんでキノコ王国に……?」
マリオは驚きを隠せない表情でコネッタに尋ねた。
「それは……、マリオさん達に渡したコネクタルツリーの苗木のお陰です。植えた場所に案内してもらえませんか?そちらでお話しますね」
世界を救い、別れ際に貰った苗木は丘から遠くない場所に植えられており、マリオはその場所に案内した。初めは小さかった木は、今では見上げるほど大きく育っていた。
「わぁ〜!綺麗に手入れもされてる!」
「コネッタの育てたツリーよりは小さいけどね」
「けど、1年でこんなに大きくなるものなのかなぁ?」
疑問に思うルイージにコネッタは答えた。
「それは、2人の思う気持ちが関わっているんです。水やりをする時、どんな事を思ってしていましたか?」
「どんな事……?そうだな……ボクはコネクタルランドでの出来事を思いながらしていたな」
「兄さんも?ボクと同じだね!……あ、ボクはまたみんなに会えたらな〜、なんて思ってたよ」
「そう!その気持ちでツリーが急成長したの!」
「「えっ?」」
コネッタの説明によると、コネクタルツリーは育てる者の思いが成長の速さに影響するという。今回コネッタ達がキノコ王国に来れた事にも関係があった。
ーーーーーーー
マリオ達が帰り、数ヶ月過ぎたある日の事、研究中のギミルダがとあるエネルギーの波動をキャッチした。それは、キノコ王国のコネクタルツリーから出ている事が判明した。アダップルもまた同じ物をキャッチしていたのだった。
その話を聞いたコネッタは、もしかしたらマリオ達に会えるようになるのでは?と持ちかけた。
「成程……可能性は無くはないですね。けど現状、波動は不安定です」
「コネリーを使えばある程度は安定するんじゃないかしらぁん?」
「ほう、コネリーを用いて安定させ、国から国への移動手段を作るという事ですね?」
「勘違いしないでよねぇ?ワタクシ様はルイージ様にお会いしたいだけよぉ」
「分かってますよ」
そこから2人の天才が熱い意見を交わし合い、特別なドカンが完成した。提案者のコネッタがドカンを使い、何度かキノコ王国を行き来して問題がないかを見ていたのだった……。
「……そうして数ヶ月間隔で、お互いの世界に行けるようになったのよ!」
「それにオムスビ様のお力添えもあって、最初の頃より行き来出来るようになったんだぞ!」
「それって……安定したらいつでも行けるって事なのか!」
「はいっ!」
笑顔で答えるコネッタを、兄弟は満面の笑顔で胴上げをした。
ーーーーーーー
「あの、実は2人にお願いがあるの」
コネッタは神妙な面持ちで兄弟に切り出した。
「「お願い……?」」
「グズグズ団のみんなを、ピーチ姫に会わせてあげたいんです!」
そう、今回お互いの国が繋がった事を知っているのはコネッタ、タップー、ギミルダ、アダップル、そしてオムスビの5人だけ。自由に、且つリスクなく往復出来るようになるまでは公表しない考えであった。
「だけど、みんなはピーチ姫と一緒にたくさん頑張ってくれた。あの後も、すごく活躍しているの」
「だから頑張っている4人にサプライズをしてやりたいんだ」
「お願いしますっ!!」
「オイラからもお願いっ!!」
兄弟は顔を見合わせ、大きく頷いた。
「なら、ついてきて!ピーチ姫に会いに行こう!」
「今日はイエロースターも来ているんだ!きっと2人もびっくりするよ!」
駆け出す兄弟の背中をコネッタ達は追いかけた。
ーーーーーーー
ピーチ城に着いた4人。ピーチとイエロースターは噴水付近で談笑していた。
「ふふふ……あら、マリオにルイージ」
「2人ともそんなに走ってきて、何が……」
「ピーチ姫!」
「イエロースターさん!」
「「……!!」」
普段通りに話していたピーチ達も、後ろからついてきた2人の顔を見て驚いた。
「う…………うそ……なんでコネッタ達がいるのよっ!?」
「た、立ち話もなんでしょう、お城に入りましょうか……」
マリオ達はピーチ城へと入って行った。
兄弟はピーチに、今までの経緯とコネッタ達からのお願いを伝えた。
「そうですか……そんな事が」
「……にしても流石ギミルダ達ね。お互いの国を繋ぐ波動を見つけるなんて」
「わたくしも是非会いたいわ。グレール、ズレッタ、ズンドー……そしてグミ。グズグズ団の皆さんに」
ピーチは長く会えずにいる、共に過ごした大切な仲間の名前を口にした。
「なら決まりですね!グズグズ団のみんなも喜びます!」
「でもよ、どういうサプライズにするんだ?」
「それならいい方法があるわ!グズグズ団にぴったりのやつが!」
イエロースターは高らかに声をあげた。
「でもね、みんなの意見も是非聞かせて欲しいの。あの子達の喜ぶ顔が見たいから!」
「そうね。なら、じっくり話し合いましょう。お茶でも飲みながら!」
そう言ってマリオ達はサプライズを成功させるべく、真剣に、けど楽しく話し合いを始めた。それは夕方まで続いた。
ーーーーーーー
〜〜数日後〜〜
「地図って難しいわね……。合ってるのかな?」
陽の光が射し込む穏やかな森の中に、4人の子供の姿があった。お揃いのスカーフを身につけたグズグズ団だ。
4人はあの出来事以来、再び1つになったコネクタルランドの平和を守る活動をしていた。今では同年代の子供達から憧れを抱かれるまでに成長していた。
「でも知らなかったな〜、まだ繋がって無かった島があったなんてな」
「結構前にギミルダ達が研究中に見つけたらしいよ。それに、この島にはコネッタの昔からの友達がいるんだって」
「コネッタの友達…会いに行く…」
「うーん……コネッタから貰った地図だと、もうすぐ森を抜けて建物が見えるはず……」
「あ…!」
「どうしたのズンドー?」
「あれ…」
彼が指差した先には、敷地内と思われる大きな広場があった。
「……!そうだあの場所!やっと見えたわ!じゃあ行くわよグズグズ団っ!!」
「おうっ!!」「お〜!」「お〜…!」
リーダーのグミを筆頭に4人は広場へと向かって行った。
森を抜け、駆け寄った広場の中央には大きな噴水があった。その奥には立派なお城がそびえ立っていた。
「うぉ〜〜!めちゃくちゃでかい城!」
「すごいなぁ……コネッタの友達って大金持ちだったんだー」
「すごい…」
「あの扉が入口か?オレ一番乗り〜!」
「あっ、ちょっと待ってよグレール」
グレールの後を追うズレッタとズンドー。
「も〜っ!リーダーのアタシを置いていかないでよね!」
マイペースな男子達を叱りつつ、グミも追いかけて扉へと向かって行った。
4人が揃うと、厳重な扉はガチャリと音を立て、ゆっくりと開いた。4人はその中へ進んで行った。
ーーーーーーー
扉の先には、目を引くブロックチェック柄の床、中央には大きな太陽が描かれた煌びやかな広間があった。しかし、人の気配は無かった。
「誰も来ないな……」
「どうしたんだろう?」
「寝てるのかな…」
「すみませーーん!!アタシ達グズグズ団でーーす!!誰かいませんかーー!!」
グミの声が響いた後、また静寂が広間を包み込んだ。不安そうに顔を見合わせるグズグズ団。すると、2階の扉が開かれ、中から人が歩いて来た。
「良かった、あのアタシ達…………」
「「「「…………!!」」」」
出てきた人物の姿に、4人は目を丸くし言葉を失った。金色のロングヘアに輝く王冠、目を引くピンクのドレス。そして、自分達が身につけている物と同じツギハギのスカーフを右手首に巻いていた……。そう、ピーチ姫だった。
「え…………え……?」
「ピーチ……姫…………?」
「なん……で……?」
もう会えるはずの無いと思っていた仲間が階段から降りて来る間、口々にする3人とは違いグミはまだ言葉が出なかった。彼女の目には、ゆっくりと降りてくるピーチが更にスローモーションのように映っていた。
(ほ……本当にピーチ姫なの……?でもあのスカーフは、グズグズ団の証……。じゃあ、やっぱり……!!)
ピーチは長い階段の最後の一段を降りて、4人にお辞儀をした。
「グズグズ団の皆さん、お待ちしておりました」
正真正銘、共に冒険をしたピーチの顔を見て、グミは気持ちを抑えきれずに駆け寄り抱きついた。
「ピーチ姫……っ!」
「……!!」
「うぅ………すっごく…………すっごく会いたかった!!わぁ〜〜ん!!」
グズグズ団のリーダーではなく、1人の女の子としての素直な反応をするグミ。そんな彼女をピーチは優しく抱きしめた。
「……わたくしもよ、グミ。ずっと会いたかった」
ピーチの頬にも一筋の涙が流れた。しばらく見ていたグレール達も2人のもとに駆け寄った。
「オ……オレだって!!すっげー会いたかったぜっ!!」
「本当に、ピーチ姫なんだね……グスッ……」
「また会えた……嬉しい……」
彼らの目からも涙が溢れていた。ピーチはグズグズ団全員を優しく抱きしめた。
「皆さん……元気そうで良かったわ」
「うん……、ピーチ姫に会えない間も色んな事があったのよ」
涙を拭いながら、グミは胸を張って言った。
「アタシね、立派なレディになれるように頑張ってるのよ!」
「あら、そうなの?お茶を用意したから飲みながら聞いてもいいかしら?」
「もちろん!」
「では行きましょう。イエロースターも待ってるわ」
「「「「はいっ!!」」」」
ピーチ姫の案内で、グズグズ団は2階へと上がって行った。部屋に入るのを見届けると、別室で見ていたマリオ達が広間に出てきた。
「みんな喜んでくれて良かったね、兄さん!」
「だな。子供にとって1年は相当長く感じるもんな」
「本当に良かった……」
「おい、なんでコネッタが泣くんだよぉ……ズビッ……」
4人はピーチ達の邪魔をしないように、城の外へと出て行った。彼らは彼らで残りの時間を過ごす事にした。
ーーーーーーー
楽しい時間はあっという間に過ぎ、キノコ王国はキレイな夕焼けに包まれた。コネッタ達とグズグズ団は、マリオ達と共に国を繋ぐドカンへと集まった。
「もうコネッタ!サプライズなんてびっくりしたじゃないのよ!」
「うふふ、ごめんね。みんなを驚かせたかったの」
「でもよ、こんなドカン作るなんてさすがギミルダ達だな!」
「本当だね〜」
大きなドカンを囲み、グズグズ団は目を輝かせた。そんな彼らにマリオ達は話しかけた。
「今は毎日とは行かないけど、いずれは毎日会えるようになるんだってな」
「ボク達もいつでもコネクタルランドに行けるんだよ!」
コネッタも2人に続いて話した。
「はい!マリオさん達の気持ちと、わたし達の気持ちが強ければ早く実現するわ!」
「そうそう!オイラ達は強いキズナで結ばれてるからなっ!」
マリオ達とコネッタ達は顔を見合わせ、強く頷いた。
ーーーーーーー
「それじゃあ、また近々会いましょう!」
「じゃ〜な、ルイージ!マリオ!」
コネッタとタップーはドカンの中へ入って行った。グズグズ団は帰る前に、ピーチとイエロースターに近づいた。
「今日はとっても楽しかったよ!」
「ドッシーにも会えた…クッキーもありがとう…」
「今度はキノコ王国を案内してくれよ!オレまた冒険したいんだ!」
「ええ、是非案内します!」
再開した時は泣いていた顔が、帰る頃にはまたひとつ成長したように笑顔が輝いていた。
「ピーチ姫、イエロースター!今度はお土産もって来るからね!」
「あら?あの時みたいに泣かなくなったのね〜」
「アタシはレディだもん!もうワガママなんて言わないわ!」
「成長しましたね、グミ!」
成長したグズグズ団に、ピーチ達は仲間として誇らしく思えた。
「もう行かなくちゃ!お母さんが心配しちゃうから」
「また来るからな〜!」
「マリオとルイージもありがとね!」
「……またね」
4人はドカンに乗り、マリオ達に最後まで大きく手を振って故郷へと帰って行った。
「みんな帰っちゃったな」
「きっとすぐに会えるよ!」
「マリオ、ルイージ、コネクタルツリーに水をあげて帰りましょう」
「わたし達の思いがあれば、コネクタルランドにも届くわ!」
マリオ達はコネクタルツリーに行き、一人ひとり思いを込めて水をあげた。最後は4人が手をとり水をあげた。
一日でも早く2つの国が永遠に繋がるようにと……。
〜END〜