🎄いたち〜🎄
「パーティーなんて柄じゃないけど、やっぱ寮のみんなでするクリパは楽しいですね」
あ〜、だなんておっさんみたいな声を出しながら、彼が気に入っているソファにどっかりと腰を下ろした茅ヶ崎は、幸せそうな顔をして、そう言った。
「うん。そうだね」
今日は12月24日で所謂クリスマスイブであった。臣たちが作ってくれた、ローストチキン、ピザ、ローストビーフ、ラザニア、ケーキ、etc…たくさんの料理が食卓にずらりと並び、それを食べた他の団員が歓喜の声をあげ、話に花を咲かせた。普段から賑やかである寮がいつも以上に盛り上がり、俺も楽しいと思った。しかし今年のクリスマスは平日である。華金というわけでもない。明日も出社しなければならない事を恨みながらも、俺と茅ヶ崎はパーティーの二次会が始まると同時に、談話室を後にし、俺たちの部屋で寛いでいるわけだった。
「ね、せんぱい。隣来て」
先程まで他のみんなに見せていた笑顔とは違う、とろけるような微笑みと、声で、俺を呼んだ。
「はいはい…何?」
「何って…つめた。せっかく先輩と二人きりになれたんで。はい、抱きしめさせてください」
「何のために早めに切り上げたんだよ…はぁ…仕方のないやつだな」
俺が両腕を茅ヶ崎の背中に回せば、広げていた両手に包まれる。
「はぁ…癒される」
「おい、まだ風呂に入ってないんだからそんなに嗅ぐな」
「あは、照れてる照れてる。先輩が汗臭くても、俺が興奮するだけなので大丈夫ですよ」
「どこがだ。というか俺は別に臭くはない」
若干ムカついた為、茅ヶ崎の背中から右手を離し、形のいい顎を掴んでやれば、茅ヶ崎は不満そうな顔をした。会社では絶対にしない表情。
「ひょっと、ひたひんでひゅけど」
「はは、なんて言ってるかわからないな」
「くひょ…」
顎を解放し、そのまま頬に手を滑らせ労わるように撫でてやればあっという間に人形のように白い頬が、桜のように色づいた。可愛いやつだな、と素直にそう思った。「もう、これ以上先輩のこと好きにならせてどうするつもりなんですか…」
「何?不満?」
「そんなわけないでしょ」
茅ヶ崎は俺の頬を包みこむように、両手をあてた。
「先輩」
「なに?」
「先輩、俺の隣にいてくれてありがとうございます。好きです。未来のことなんて一つもわからないけど、先輩のこと、明日も絶対好き」
いつもより視界が広くなった気がした。それは俺が目を見開いていたからであり、それに気がついたのは茅ヶ崎の顔が近付いていて、その美しいめに俺が映っていたからだった。そして唇に何かが触れ、ちゅ、と控えめに音を立てて茅ヶ崎は離れていった。俺が黙っていれば、また抱きしめられ、茅ヶ崎の顔は見えなくなった。俺たちはお互いに無言だったはずなのに、うるさい、と思った。その音は茅ヶ崎の音だったのか、それとも、俺の音だったのかわからなかったから、茅ヶ崎の意識がそこから離れるように一言、うん。と。