『今だけは』 日々、ゾンビを鎮静化させている我が部隊は、今月からとある敷地内の治安維持の任務が課せられた。
何でもここには多種多様なゾンビが夜に徘徊しているらしい。我らが隊長の力に頼りきらず、我々も平和と安全の為に動かなくては。
白の制服に身を包み、左胸に青い薔薇のコサージュを付ける。前髪を後ろに撫で付け、我が隊のマークであるブルーローズ隊の刺繍が施された軍帽を被る。
部隊が考案した銃を持ち、今日も我々は配置に着く。
「__お疲れ様です。アオキ分隊長。」
「ん?あぁ、君か。」
彼は、私と同期にあたる。同じ分隊長の立ち位置ではあるが、私はその中でも今回は責任者として立ち回らないといけないらしい。
「君は、確かあのダイナーレストランの前が担当だったか。」
「はい。アオキ分隊長は、その先にある街でしたよね。」
「あぁ…だが、私は兼任せねばならない。君が担当する場所もな。」
「そうですか…やはり、アオキ分隊長は頼りにされていますね。我が隊長から。」
「今日まで鍛え上げてきた、若い隊員を見守りたいんでな…アイツらはまだ戦場の経験が少ない。最初の数日は、他の分隊長と連携を取らせる。なるべく犠牲が出ないようにな…」
「…そうですね。」
彼は少し俯きながら答える。
私と彼の時代は、まだゾンビへの対処法が確立されておらず、これまで多くの犠牲者が出た。
それを経験しているからこそ、私たちのような古株は次の世代に未来を繋げるためにも覚悟を決めている。
「ところで分隊長。昼食は取られましたか?」
「いや、まだ取ってはいないな。一度本部に戻り、そこで食事を摂ろうとは考えていたが…」
「でしたら、私が担当するエリアにあるダイナーレストランに行きませんか?噂によると、ハンバーガーが有名で、かなりの食べ応えがあり、とても美味しいそうですよ。」
「ほう、ハンバーガーか…最近久しく食べていなかったな。君は?行くのか?」
「えぇ。なので、アオキ分隊長もご一緒しませんか?たまには外食しながら、お互いの話でもしませんか?」
「フッ…いいな。よし、行こうか。」
「ありがとうございます。」
「あ、あとな」
「どうしました?」
「今だけは、上下関係無く、昔のように呼んでくれないか?」
「…ハハッ。分かりました、レイジ。」
「食通のお前が言うんだ。期待が高まるな。」
「あぁ、任せとけ。」
任務中は常に緊迫しており、隊の規律を乱さない為にも"隊長"として、なかなか気が抜けずにいた。
だが、この男の前では私はただの"友人"で居れるのだ。
また昔のように、他愛もない話題を広げて未来について語ろうではないか。
なぁ……