きみに似た花束 緑と白を基調にして、赤を差し色にした花束。
オールアップだったから、と抱えた玄純が玄関から射し込む西陽を背に簡単に答える。
「んだよ、こんな早いなら迎えに行ったのに」
「お前今日作業日だろ」
外で飯とか食いたかった、と口をとがらせて言うと、そっけなくそう返される。
撮影おつかれ、調子は?、んーぼちぼち。軽く言葉を交わしながら、手を洗いに洗面所に向かう玄純に付いて行く。
「ところでそれ、」
袖をまくるため、自然と受け渡された花束を玄純がわずかに上げたあごで示す。
「どうする?」
「やべ、生けるもんないよ」
抱えた写真はSNS用に現場で撮られたと言うので、手に持たせた花束単体の写真を念の為数枚撮らせて、それから再び洗面所に持ち込む。洗面ボウルに水を張る間に、巻かれた赤のリボンを外し、ラッピングのセロファンと薄紙もほどいてしまう。茎の部分を溜めた水に浸す。
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