ドクダミ『 キィィィィン 』
ジャマダハルについた血痕を乱雑に振り落とし耳に届く【音】に耳を澄ませる。
「……きたか……」
愛おしい存在たちに渡した涙石から聞こえる【音】があの子達がこの場所に辿り着いた事を知らせてくる。
「っ……!」
込み上げてくる強い喜びに胸の核がズキッと痛みを発する。
すでに自分の核は見るに無惨なほど、ボロボロになっている。
この場所に舞い戻って、マナの樹を生かすため無数に増える毒虫どもから今までずっと戦い続けてきた。
全ては愛する我が子たちの為に、もう一度その姿を見たいと願う自分の為に。
「もうそんなに持たないだろうけどな……」
この胸の核が砕ける前に、本当の意味でこの世界を守る為に全ての始まりに挑む二人の元へ。
自分の中に残った命を全て与える為に、枝から枝へ、飛び降りていく。
やがて聖域唯一の石造の広場に待ち望んで二つの人影を眼下に見つけた。
あぁ……ずいぶん大きく育ったな…
気配に気づいたのか見上げてくる4つのターコイズブルー。
ルチルはずいぶん逞しく育ったな。
アイリスはちょっとお転婆さんになったか?
自然と笑みが口元に浮かんでいく。
夢にまで見た成長した我が子たちの姿をはっきりとこの目で見ることができたのだから……もう、思い残すことはない。
太い枝から武器を構えて飛び降りる。
さぁ俺の愛し子たち、俺の全てを持っていくといい、お前たちの使命を果たす為に……。
『 愛してるよ 』
ドクダミの花言葉
「白い追憶」「自己犠牲」