エグリア健全BL「…」
チャボは今日も今日とて、素材集めの冒険に出ていた。
精霊の力を借り、モンスター達を倒して進み、建築材や食材、種なんかを山程手に入れた。
精霊達にもお礼を言って別れ、あとは家に帰るだけ。本来ならニッコニコで歩いている所なのだが。
「鬱陶しい。さっさと帰れよ」
横を見もせずにチャボが毒づく。
心底うんざりした表情だ。
「はぁ…わがままだな、お前は」
言われて溜息をついたのは、お礼を言って別れた筈の精霊のひとり、リュリウイである。
「チャボが別れたくないと言うから、この俺が隣に居てやってるんだろう」
「いつ?僕はさよならって言った筈だけど」
「お前の心が常に俺に語り掛けている。リュリウイ好きだ、片時も離れたくないと」
「ハァ〜」
思わず長い溜息が出る。
なんでコイツの頭は常にこんな…イカれてるんだろう。
「勘違いも甚だしい。お前なんか嫌いだ」
「ふっ、あまり俺を試そうとするなよ」
「試す?」
「俺の愛がどこまで耐えられるか試しているんだろう。生憎だがお前が何をしようがこの絆には亀裂すら入らん」
「訂正するよ。大嫌いだ」
本当に鬱陶しい。コイツを呼ぶといつもこうだ。会話が成立しない。他の精霊を呼べば良かった。
とは思うが仕方ない。性格はこんなんでも実際、役には立つのだ。
「やれやれ、今日はご機嫌ナナメか?子猫の気分は変わりやすいな…」
「何度も言うけど僕は子猫じゃない。気分も変わってない。さっきも言ったろ?鬱陶しいからさっさと帰れって」
「そうか」
割ときつい事を言っているが、聞いているやらいないやら、リュリウイは気にした風もなく空返事をする。
「どうせ聞く気ないんだろ。お前の顔なんか見たくもないのに」
「ならば仕方ない。ここまでで別れよう」
「えっ」
「怒らせるのは本意じゃないさ。ここで見送るよ。じゃあな」
「…」
予想外の言葉に、少し黙ってしまう。どうせ撤回されるものと高を括っている…訳でもないようだ。言った通りに立ち止まり、リュリウイは今は少し後ろにいる。
チャボは歩みを止めていないので、距離はどんどん開いていく。
…いつもなら勝手に家までついてくるのに。
一度言ったからには、ふつう…。最低でも町までくらい、一緒にいるもんじゃないのか。
こんなにあっさり引き下がるなんて、もしかしたら…傷つけただろうか?いや、こいつがそんな感情を持っている訳がない。
ただ、このまま別れるのは後味が悪い。自分もさすがにちょっと…言い過ぎたかも知れないし。
「別に…。話しかけないなら、ついて来てもいいけど」
「フハッ」
「!」
リュリウイが変な声で笑った。
本っっっ当に腹が立つ。
「ムカつく…大っ嫌いだ」
「嘘が下手だな。俺も愛してるよ、チャボ」
「そんなこと言ってない!話しかけるな!もうついてくるな!」
苛立つ気持ちのまま、真っ赤になってチャボは怒鳴る。
あとはもう黙ったまま歩き続けた。…勿論、隣の精霊はずっと何か訳の分からない、下らない話をしていたが。
大嫌いなのは本当だ。だけど好きなのも実は、リュリウイの勘違いって訳でもなかったりする。
おしまい。
・あとがき
チャボは喋らない(プレイヤーに想像させる系)主人公なので、私なりの解釈で書いています。
ここまで塩…ツンデレ?対応なのはリュリウイに対してだけです。
リュリウイは実は駆け引きしてるつもりはなく、怒ってるなら放っといてやるか…と、折れてあげた気でいます。なので普通に単純に喜んでます。
余裕っぽいお兄さんと少年の組み合わせはいいよね。
まあなんかあの人頭おかしいけどね。
あとチャボの年齢わからないけどね。
楽しかったです。
読んで下さった方ありがとうございました。
2023.07.13.