随分久しぶりに聞く音がする。
それに釣られて歩いていくと、綾斗の自室の前に辿り着いた。
家の中は好きに動いてもいいとされているが、必要とするものが全て用意されている俺用にあてがわれた部屋以外は基本的に行かない。
綾斗の部屋に来るのは初めてのことだった。
出掛けると聞いていたので家主がいないことは分かっていたが、なんとなく音を立てないようそっと扉を開き、中を確認する。
綾斗らしいきちんと整理された部屋がそこにはあり、音源の元はさらによく聞こえるようになった。
初めて入る部屋に落ち着かない中、音が出ている物を探す。
あった、机の引き出しの中。
音源の元を手に取ってやっぱりそうだったかという納得感と少しの驚きを感じる。
1963