カフェオレ 新潮文庫が好きだ。
天のアンカットや、スピンが付いているところ。ぶどうのマーク。素朴な手触りが、手に馴染む感覚がする。
表紙に惹かれて、所謂ジャケ買いをすることもあるのだが、僕は本を読む時にまず表紙を剥いでしまう。帯も外して、スピンをはじめのページに挟み直して。こうやってはじめて、その本を読み始める準備ができるのだ。
「ブックカバーでもプレゼントしようか」
ソファの隣の席でそう笑った雨彦さんは、コーヒーをミルクなしで飲む。僕も最近はブラックが好きだ。思考がすっきりする気がして、すがすがしくなる。
「あ、いいですねー。嬉しいですー」
「今度買ってやろう」
他愛もないおしゃべり。お互い一緒にいるのに別々のことをする、それが当たり前になっているのが心地よかった。
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