彼女の話彼女はエルフだった。人間の私より当然長生きして、私が先に死ぬ。そう思っていた。
彼女は事故で死んだ。
あっけなかった。事故に遭ったと知って病院に駆けつけた頃にはもう死んでいた。
現実ではないような気分のまま葬式が終わり、私は彼女の家族に遺品整理を頼まれた。
遺品整理をしながら、彼女との日々を思い出す。
彼女は恋人の私に一度も好きと言ったことはないし、いつもそっけなくて何を考えているかわからなかった。
私だけが彼女を好きで、長寿の彼女が人間の私に付き合ってくれたのは時の気まぐれ。私の一方通行。そんな感じだった。
部屋に入り、見渡す。
棚には一緒に水族館に行った時の魚のぬいぐるみが飾ってあった。
引き出しを引くと何度か練習したように見えるヨレヨレのシュシュや、開いたままのイヤリングがあった。全て私が贈った物だった。結局、一度も着けて見せてくれることはなかったけど。…練習してくれていたんだ…。
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