右手でワイングラスを弄び、のんびりと赤ワインを飲みながら部屋に流れている音楽に合わせてヒューザの事を蹴る。
ドスッ…という蹴りが入る音やヒューザが呻く声やすすり泣く声が音楽のアクセントになる気がして、酔いが回ってきたのもあり気分が良くなった勢いで更に強く蹴りを入れる。
気まぐれにヒューザの方へ視線を落とすと涙でぐちゃぐちゃになった顔で何か言いたげに俺の方を見上げていた。
「ん…?なんだよ、そんな顔で俺のことを見つめて…」
ヒューザが何か言おうと口を開きかけたのは無視してあぁ、そういう事か!と思い付き、半分ほど飲んでしまったワインの瓶を掴むとヒューザの顔の近くにしゃがみこみ、髪の毛を掴んで顔を引き上げ、困惑した表情を浮かべるヒューザの口の中へ強引にワインを流し込む。
急に液体を流し込まれ上手く飲めなかったのか激しく噎せ、ワインを吐き出すヒューザ。
「あーあ…勿体ねぇなぁ…全部吐きやがって…せっかくお前が物欲しそうな顔で見てきたから飲ませてやったのに…ん?あぁ、そうか……仕方ねぇなぁ!ワガママな奴。今日は機嫌がいいから応えてやるか」
ヒューザは何をされるのかわからない、という顔をしていたがそんなことは気にせずコートが汚れるのも構わずヒューザが吐き出したワインの池の中に膝をつくと、瓶からそのままワインを口に入れヒューザに口移しで飲ませてみる。
つ…とヒューザは口の端からワインを垂らしつつもあまり拒まずこく……と喉を鳴らし口移しのワイン飲み干す。
素直に飲むヒューザがなんだか面白く見え、どんどん口移しでワインを飲ませていく。
「ん……っ、ふ…ぅ……ア、イ…ザック……?」
「たまには違う反応を見るのもいいな、そんな情けねぇ面してさぁ…?」
キスのせいかアルコールのせいかは分からないが頬を赤く染め、蕩けた顔を見せてくるヒューザ…コイツこんな可愛い顔出来たんだな、でもなぁ…やっぱり……
ニヤリ、と口元を歪めるとまだ少しだけ中身の残っている瓶をヒューザの頭めがけて振り下ろす。頭に物がぶつかる鈍い音と、瓶の割れる音が部屋に響き渡る。辺りには瓶の破片とワインが散らばり、部屋の明かりに照らされ奇麗だと思わされるような光を放っていた。
ヒューザは頭を抑え呻き声を上げながら腕に瓶の破片が刺さるのも気にせず蹲る。
「ヒューザぁ…?おーい?」
「ッ…ぐ、ァ……!いだ、………ぃ…ぅ……っ」
普段より痛がってるなぁ…やっぱり俺はこういう反応が1番興奮するや…♡
背筋にゾクゾクと快感が駆け抜け、歪み切った恍惚とした笑みで苦しむヒューザを見下ろす。にしても普段より痛がってるよな…?破片でも刺さってんのかな。
少しだけ気になり頭を抑えて苦しむヒューザの手を強引に退けると、さっき殴った箇所を探ってみる…すると瓶の破片が刺さっていた。
「仕方ないなぁ、抜いてあげるよ。ほら」
ズボッと音がしそうな勢いで瓶の破片を抜いてやる。ワインの赤と血の紅で染まる傷の周りはとても綺麗だった。もっと血とワインでぐちゃぐちゃになった方が俺好み、だけど…
傷を治して欲しいのか、これ以上苦しめられたくないのか泣きながらごめんなさい…痛い…と言うヒューザを見ていると違う欲望が渦巻いてくる。
「ねぇ、ヒューザ?治して欲しい?なら俺の言うこと聞けるよな?」
「……!き、く……からっ……もう、辞めて……くれっ…」
仕方ないな、と笑うとまだ血の止まらないヒューザの頭の傷跡にちゅ、と唇を付けその血を啜る。ヒューザは一瞬何をされているのか分からず固まるが、何をされているのか理解すると嫌がるように身体を震わせる。そんなのはお構いなしにヒューザの血を啜る。
血の味ってこんなだったっけ…?もっと鉄の味がするだけで不味かったはずなのに…ヒューザの血の味は例えるならネクターのような…とても甘美で頭がクラクラするような、虜になってしまいそうな、そんな味だった。
気が済んだので傷口から口を離すと今度は持っている破片で自分の右手を深く抉るように傷付ける。ボタボタと鮮血が滴り落ち、足元を紅く染め上げていく。
「おまっ……何、して……!」
「ん?あぁ、ヒューザ…ほら飲んで?」
は?と言うような顔をするヒューザ。馬鹿だから理解出来ねぇのかな…
「俺がヒューザの血を飲んで、ヒューザが俺の血を飲んだら1%くらいはお互いの身体がお互いのものになるだろ?流石に自分の身体の一部になったヒューザの傷をそのままにしておく気はないから…ほら、これだけ言えば馬鹿なお前でも理解出来ただろ?治して欲しけりゃさっさと飲んで俺の一部になれ。」
そう言い、ヒューザの口の近くへ血の滴る右手を近付ける。
「オ、オレ……は……」
「飲まなきゃ治さねぇけど?俺はどっちでもいいんだよ、お前の傷なんか」
ヒューザは少しだけ悩んでいたが傷が余程痛いのか口を開け舌を出し垂れる俺の血を少しだけ飲んだ。血の味に吐き気を催したのかうっ、と声を出すもこれでいいだろ…?と苦痛に歪んだ顔で言ってくる。まぁ約束は果たしてやるか、俺優しいし。
慣れた手つきでヒューザの頭の傷を縫い、適当にやくそうを使ってやる。
「珍しく俺がここまでしてやったんだから満足だろ?」
「あ、ぁ……ありがとう……」
そこ片付けとけよ、と吐き捨てリビングを後にする。にしても今日は愉しかったな…ヒューザの血も美味しかったし…と、そんなことを考えると俺の口角はまた上がるのであった。