ズキ……と頭の芯に響く痛みを感じた気がして…ぼんやりとしたままの意識を取り戻そうとする前に誰かの悲鳴で意識が呼び戻される。
ハッとして辺りを見回すと一緒にいた友人2人が見知らぬ人間に痛めつけられていた。助けようとして立ち上がろうとすると拘束されていることに気が付く。
「お?こっちのにーちゃんも目を覚ましたみたいだぜ」
「なら…たっぷり可愛がってやんねぇとな?」
ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべたままで1人の男が近付いてくる。その近付いてきた男を睨みつけると
「なんだお前ら…あの2人に何をしやがった!ツェルちゃんとスコーンを離せ!」
「他人の心配してる場合かぁ?まぁ威勢のいいエモノは嫌いじゃねぇ」
そう言うと男は俺の顔を掴み強引に口を開かせると大量の水を注いできた。
「んっ、ぐ!?………ガ……ッ…!」
「ほーら、水飲ませてやるよ」
際限なく水を飲まさせられ喉から呻き声が漏れ、胃が苦しくなり激しい嘔吐感に襲われる。何とか逃れようと暴れてはみるが拘束が取れる様子はなくどんどん水を注がれる。
ゔっ……と声を上げ堪らず胃の中のものを全て吐き出す。
「ゔっ、ぇ…!ゲボっ、ォエッ…ぅ……ッ、ゲホ……ッ」
「なんだよもう吐いちまったのかよ、他の2人を見習ってもう少し耐えてくれよ」
そういう男の視線の先を見るとツェルが酷い拷問を受けていた。
「お嬢ちゃ~ん、これはどうだい?」
「……、ぃ…だ…ッ!」
ミント色の綺麗な肌に猛毒の塗られた短剣で執拗に傷を付けられていた。斬り付けられた場所の周辺の皮膚の色は変色し、傷口も通常の傷跡とは明らかに違う焼け爛れたような無惨な状態になっていた。
「あーあー綺麗な肌がこんなぐっちゃぐちゃになっちゃってー」
「やっ、づ……ゔぅ………」
「泣き顔もかーわいいいねぇ」
この下衆が…!と言いながらニヤニヤと笑うだけの男を睨み付ける。じゃあアッチのにーちゃんは?と言うからスコーンの方を見ると彼は何をされているのかここからではよく分からなかった。
「お前……僕にこんなものを塗りたくって何がしたいんだ……?」
「それはなぁ…まぁ今に分かるさ」
ニヤリと男が笑うと奥からキャタピラーや虫系の魔物が何体か現れた。男が特に合図をした訳でもないが魔物たちはスコーンの方へ脇目も振らずに群がってきた。
「は、?何………や、やめ………!」
「お前さんにたっぷり花のみつを塗っておいたからな、喰われちまいな」
蜜まみれのスコーンの体を魔物たちは勢いよく喰い荒らしていく。グチャグチャという音とスコーンの悲痛な悲鳴が辺りに響き渡る。
「めッ、で……ぁぁっ、あ゙あ゙あ゙!!!」
「これいいだろう?評判いいんだよ」
悲鳴を上げ続ける2人を見て激しい怒りが込み上げ俺は1番近くに居る男を睨み付けながらいい加減にしやがれ!!と怒鳴る。そんな俺の反応を見ても男は笑うだけでお前自分の状況分かってんのか?と言ってくる。
「そんな生意気な口きけなくなるくらいにーちゃんにも従順になってもらわねぇとな」
「っ、はぁ?……んぐッ………!」
男は俺の反応を愉しむように何度も強引に水を飲ませてきた。
辺りに響く2人の悲鳴と何度も吐いたことで体力を消耗し、段々と回らなくなる頭で必死になんとかしなきゃ…と思い続けていた。