穴 全身の不快感で目が覚める。汗で皮膚同士がペタペタとして気持ち悪い。数時間前の情事の跡が残る身をそっと起こしてベットに腰掛ける。閉まったままのカーテン越しに、陽の光が部屋をほんのり明るく照らしていた。
(だる……はぁ、今何時だろ)
じっとりとした空気がこもっている感じがする。チラリ後ろを振り向く。壁側で寝ていた忍は、頭まで布団にくるまったまま、まだ起きる様子はない。昨日は特に滅茶苦茶にしてしまったから、起こすのは気まずい。窓を開けたかったが、そのままにして部屋を後にした。
シャワーの栓を捻って、水がお湯になるまで待つ。手のひらに降る冷水がじわじわと温くなっていく。その手でシャワーヘッドを持ち、首の後ろからお湯を当てた。
「はぁ……」
心地よさから思わず息を吐いてしまう。ぐっと背を逸らして固まった体を伸ばす。
ざっと体中の汗を流して、風呂から上がった。
忍の体を拭く用に濡らしたタオルを持って部屋に戻る。そっと扉を開けたが、翠が出た時と変わらず忍は寝ているようだった。時間は昼に差し掛かっており、秋口とはいえ部屋の中は蒸し暑い。布団を被って微動だにしない様子に、少し不安になる。
「……忍くん、ねえ……大丈夫?」
彼の後頭部に向かってそっと話しかける。反応はない。布団の上から肩の辺りを掴んで揺する。やはり反応はない。
「ねえってば……ねえ、怒ってるの?」
もしかして、彼の静止を聞かずに何度もしたことを怒って無視を決め込んでいるのではないか。そう思うとなんだか面倒になってきて、布団の端を掴んで引っぺがした。横たわる白い体が露わになる。何も着ていないことに少しどきりとするが、肩口を掴んでこちらを向かせる。
されるがままに上半身は仰向けになり、遅れてかくりと頭がこちらに倒れる。前髪が重力に従って、はらりと顔から落ちた。透き通るような白い肌に瞑ったままの両目。黒いまつ毛はぴくりとも動かない。緩く開いた唇も怖いぐらいに白かった。
「あ、え?」
忍は息をしていなかった。