9月新刊予定の作品の序章部分「……ん、てん……"貂"ってば!」
「……ん?」
真っ暗だった。頬が触れている感触が硬い。机か何かに突っ伏している。顔を上げると、眠っていたからか視界が霞んでいたので何度か瞬きしてから目を擦る。目の前にいる人物はもうすっかり見慣れた顔だった。サラサラと綺麗な赤毛が顔の左側から吹いてくる爽やかな風に揺れて顔に少し張り付いている。
「……練牙さん?」
まず視界に入って来たもののその名を口にする。でも、段々周りが見えて来て、何かがおかしいことに気づく。目の前の練牙さんはなぜかブレザーの学生服を着ている。――あす高の制服じゃないな。どこのだ?オレたちなんかドラマとか撮影してたっけ。学生服を着た練牙さんは椅子の横に足を投げ出すようにして横向きに座って、オレを振り向いている。
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