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    3³.

    フルイタ倉庫

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    3³.

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    フルイタ 通常の二人
    一時的にフルが異質な存在になるお話し。

    短編 空に焦がれた怪物を僕は愛している 体に不具合が起こることはよくある。
     その度に最適化され、調整される体は既に人ではなくなっているのだろう。
     立ち入り禁止の張り紙が異質に何枚も貼られた部屋の前にイタカは立っていた。
     試合を終えたばかりのイタカに告げられたのは、フールズ・ゴールドの不具合による試合出場停止によるスケジュールの変更と、彼の部屋への立ち入り禁止である。
     そんな忠告を無視して、イタカはいつものようにノックもなしにドアノブを回した。
     カーテンを引いたままの部屋は薄暗く、中央にのっぺりとした闇が横たわる。 
     扉の隙間から射し込む廊下の灯りが、その闇の輪郭をぼんやりと浮かび上がらせた。
     どろどろとした黒い液体を纏った塊が、光を嫌うように蠢いている。
     イタカは、躊躇なく部屋に踏み込んだ。
     扉は支えを失い、緩かに閉じていく。一筋の線が細くなり、やがて灯りが消える。
     深い闇の中、イタカは吐息に交えて囁いた。 
    「フールズ」 
     イタカの声に反応して、フールズと呼ばれた塊はずるずると音を立てて動きだす。  
     こんな状態になるほど、フールズは不安定だった。
     荘園で人の姿【サバイバー】として過ごした時期が長過ぎたせいだと風の噂で聞いたが、その真実を知る術もない。 
     フールズも【サバイバー】の時の記憶は覚えてないそうだ。ただ、本来の人であった頃の記憶を時折、思い起こすそうだ。
     その記憶ですら、遠く、霞がかっているのはイタカも同じであった。
     いつか、自分たちは人の形ですら忘れてしまうのだろうか。 
     不意に脳裏を過った考えに、イタカは思わず苦笑を漏らした。
     そんなことはどうでもいい。むしろ、願ったり叶ったりだ。
     それなのに、フールズは人の姿のままがいいと話していた。
     抱きしめる腕、口づける唇や、髪を梳く指ですら失いたくはないと。
    「フールズ」
     イタカは仮面を外し、無造作に床へ落とした。
     からん、と小さな音が立つ。
     すると、フールズが手のような形をしたものを伸ばして、イタカの滑らかな頰に触れた。  
     ぎこちない動きで撫でるフールズの手に、イタカは頬を擦り寄せる。 
     暫くそうしていると、ノイズが混じったような声がイタカの耳に届いた。
    「そ、ら」
    「中庭でランチを食べながら見るのもいいかもね」
    「い、たか…」
    「フールズ」
     イタカは、どうしても甘くなってしまう口調をごまかすように、両腕を大きく広げた。  
     誘われるようにしてフールズは、どろどろした液体を滴らせながら人の形を作ろうとする。イタカの真似をして二本の腕を作ったまではいいが、足を上手く動かせず、その場でたたらを踏む。右に左に大きく揺れ、再び形を失い、黒い液体となってイタカの頭の天辺から全身を呑み込んだ。
     どろどろの黒い液体が濁流のように押し寄せ、闇の中に引きずり込まれる恐怖をイタカは微塵も感じない。
     フールズが抱きしめる腕の存在をどことなく感じながら、イタカは目を閉じた。
     目が覚めたら、たまには自分からキスをして驚かせてみようと、イタカは悪戯っぽく笑い、意識を手放した。
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    izayoi601

    DONE思いついたので一人飯するじょしょどのの話。台詞などでも西涼二直の中ではじょしょどのが一番食事好きな方かなと妄想…脳内で色々分析しながら食べてたら良いです…後半は若も。庶岱と超法前提ですがもし宜しければ。ちなみに去年の流星での超法ネップリと同じ店です。
    早朝、一人飯「これは、まずいな……」
     冷蔵庫の中身が、何も無いとは。すでに正月は過ぎたと言うのに、買い出しもしなかった自らが悪いのも解っている。空のビール缶を転がし、どうも働かない頭を抱えつつダウンを着るしかない。朝焼けの陽が差し込む中、木枯らしが吹き付け腕を押さえた。酒だけで腹は膨れないのだから、仕方無い。何か口に入れたい、開いてる店を探そう。
    「……あ」
    良かった、灯りがある。丁度食べたかったところと暖簾を潜れば、二日酔い気味の耳には活気があり過ぎる店員の声で後退りしかけても空腹には代えがたい。味噌か、塩も捨てがたいな。食券機の前で暫く迷いつつ、何とかボタンを押した。この様な時、一人だと少々困る。何時もならと考えてしまう頭を振り、カウンターへと腰掛けた。意外と人が多いな、初めての店だけれど期待出来そうかな。数分後、湯気を掻き分け置かれた丼に視線を奪われた。
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    gohan_oic_chan

    PAST行マリ
    卒業後同棲設定
    なんか色々最悪です
    証明 朝日を浴びた埃がチカチカと光りながら喜ぶように宙に舞うさまを、彼はじっと見つめていた。朝、目が覚めてから暫くの間、掛け布団の端を掴み、抱きしめるような体勢のまま動かずに、アラームが鳴り始めるのを待っていた。
     ティリリリ、ティリリリ、と弱弱しい音と共に、スマートホンが振動し始める。ゆっくりと手だけを布団の中から伸ばし、アラームを止める。何度か吸って吐いてを繰り返してから、俄かに体を起こす。よしっ、と勢いをつけて発した声は掠れており、埃の隙間を縫うように霧散していった。
     廊下に出る。シンクの中に溜まった食器の中、割りばしや冷凍食品も入り混じっているのを見つけると、つまみあげ、近くに落ちていたビニール袋に入れていく。それからトースターの中で黒くなったまま放置されていた食パンを、軽く手を洗ってから取り出して、直接口に咥えた。リビングに入ると、ウォーターサーバーが三台と、開いた形跡のない数社分の新聞紙、それから積み上げられたままの洗濯物に囲まれたまま、電気もつけずに彼女はペンを走らせていた。小さく折り曲げられた背が、猫を思わせるしなやかな曲線を描いていた。
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