甘いもほどほどに。レイマシュふうふ小話。
「行ってらっしゃい、レインくん。お仕事がんばってね。」
「ん、行ってくる。」
そうやり取りすると唇を重ねる。いつもの決まった朝のルーティンだ。マッシュの薄く柔らかな唇をレインは僅かな時間を惜しむことなく、余す事なく存分に堪能する。
「んっ…」
そろそろ離れなければならない。
出来れば仕事になんか行かずにマッシュの傍に居たい…。
と、思うが現実はそうはいかない…。
そんな事を思うまでがレインのワンセットだ。
唇が離れると、とろんとした表情を見せる最愛の嫁が可愛い、可愛いすぎる。今すぐに寝室へ連れ込んでブチ◯したい…!いや、一昨日抱いたばっかりだろ…とレインの脳内がひとり騒がしくなる。
「あの…レインくん、苦しいです。あと、冗談抜きで遅刻しますよ?」
「あ…」
どうやら無意識のうちにマッシュを抱きしめていたらしい。身体がマッシュから離れたくないと全力で叫んでるようだ。
「転移魔法を使えば問題ねえ。だから、もう少しだけこのまま…」
「もう…仕方ない人ですね。」
そう言うと、マッシュはレインの髪をセットが崩れない程度に優しく撫でる。付き合っていた時のレインはマッシュに甘える事が少なかったが、結婚して一緒に暮らす今、時々度を超す時はあるものの、こうして甘えてくれるようになったレインにマッシュは内側から愛おしさに満ち溢れていた。
「ふふっ」
「ん、何だ?」
「いいえ?何でもないですよ。」
「…そうか。そろそろ行ってくる。」
「ねぇ、レインくん。」
「ーー?」
気持ちがようやく満たされたレインがマッシュから離れようとすると、今度はマッシュからレインの左耳に耳打ちでこう呟いた。
『あいしています』
「…!!お、おまっ…」
「っ…ほらほら、もう時間がやばいでしょ。僕も開店準備があるんですからっ!!言いたいことは帰ってから聞きますんでっ!!」
「なっ…ちょっ…押すなって!!」
つい言いたくなってしまった言葉に今頃恥ずかしさが込み上がり、マッシュはぐいぐいっとレインを押し出すように玄関の扉へ促す。
「お前オレが帰って来たら覚悟しておけよ。」
去り際に彼の欲に火を灯してしまったことに、マッシュはやってしまいましたな…と小さく呟いた。
今夜はレインが残業せずに帰って来ること、そして朝まで寝かせてくれないであろう…とマッシュは静かに覚悟を決めていた。
終