ただいま、ようこそ、我がおうちへレイマシュふうふ小話if
『ただいま、ようこそ、我がおうちへ』
マッシュのお店に来たブラッドから雑談がてらで生後間もない赤子を保護した話をマッシュに話す。詳しく聞くと、赤子は衰弱した状態で発見され、身寄りもなく、更には魔法不全だという。
ブラッドは魔法不全者というとすぐさまマッシュが浮かび、秘密事項でもないのでふと話したくなった。マッシュが世界を救って以来、魔法不全者の扱いが変わりつつあるがやはり一部ではまだ偏見差別が残っており、赤子もその対象となったそう。
その話を聞いたマッシュは、とても他人事とは思えず心配になり、その子は今どこにいるのか尋ねる。赤子はメリアドール医院で集中魔法治療を受けていると知り、マッシュとレイン(この日は仕事が休みでマッシュの手伝いをしていた)は店を早めに切り上げるとメリアドールの元へ訪ねる。
マッシュはブラッドから聞いた旨を伝えると、メリアドールは直ぐに案内してくれた。全身に管が繋がれ、魔法の球の中に包まれたアザの無い小さな赤子を目にして、2人はその痛々しい姿に言葉を失う。メリアドールによると、「今はギリギリ保っている状態で、いつ命を落としてもおかしくは無い」とのこと。レインは「ひでぇ事を…」とやり場ない怒りを表す。反対に冷静なマッシュは触れてもいいですか、と許可を得てその赤子の頬に触れる。まだ生きている温かさに「よく頑張ったね、もう大丈夫だよ。」と言う。レインも見守るように寄り添い、赤子の指に触れた。
その様子を見て、2人の胸の内に思う事があるのだろう、とメリアドールは静かに見ていた。
それから毎日、2人は時間を作って赤子に会いに行った。決まった時間の限りに触れて、話しかけた。赤子は少しずつだが回復の兆しが見え始め、経過良好になりつつあった。そんな日々が2週間ほど経ち、マッシュは意を決してレインに伝える。「あの子を僕とレインくんの子として育てたい」と。だが、子育てをした事が全く無い自分が、簡単に言っていいものではないとも理解していた。初めて触れた時に感じた守りたい気持ちが強くなったこと、じいちゃんが自分を大事に育ててくれたように、その赤子にもしてあげたいといつのまにか涙を流していた。
するとレインは優しくマッシュを抱きしめ、「オレも同じことを考えていた。」とマッシュに伝える。親のいない辛さを知っているレインは無意識のうちにその赤子と自分を重ねており、マッシュと一緒にこの子を幸せにしてやりたいと考えていた。先に言われたとはいえ、同じ事を思っていた事に嬉しさがあった。
2人はその赤子の親になる事を決め、善は急げと言わんばかりに、真っ先にメリアドールへその旨を伝えに医院に向かう。
赤子を養子として引き取る事を聞いたメリアドールは「貴方達ならそう決めると思っていました。」と微笑み、養子縁組の手続きに必要なものを教える。その平行線でマッシュはフィンとドミナを家に呼ぶ。レインも同席し、2人に身寄りの無い魔法不全の赤子を養子として引き取る事を伝えた。身内になる事をフィンとドミナに話しておきたかったのだ。2人は始めは驚くも、フィンは「そう決めるところが2人らしいね。僕もその子に会いたいなぁ。」と言い、ドミナは「マッシュ達が決めた事なら反対も何もないよ。何かあれば協力させてほしい。」と快く歓迎する。
フィンとドミナに話す前に、養父のレグロにもこの旨を伝えていた。孫が出来ることに喜び過ぎて腰を痛めるレグロ。話しの発端であるブラッドも涙ながらに良かったァ…とホッとする。マッシュは「あの子に会えたのはブラッドさんのおかげです。ありがとうございます。」と礼を言うと、ホントいい子なんだから〜〜!!とわいわいするレグロとブラッド。
それからレインとマッシュは育児に必要なものを買い揃えたり、物置と化していた部屋を片付けたり、名前を考えたりと迎える準備を進める。もちろん赤子にも毎日会いに行くと、懸命な治療のおかげで前よりも顔色や表情が良くなり、繋がれていた管も取れるようになった。そして2人が初めて抱っこをした後に、ようやく泣き声を聞く事ができた。
この調子だと近いうちに退院ができると知り、喜ぶレインとマッシュ。
そして赤子と出会ってから1か月が経った。その間に養子縁組の手続きも無事に終え、赤子は正式にレインとマッシュの養子となった。
ついに「退院おめでとう」と祝福の声が上がる。赤子は2人が選んだセレモニードレスを身に包まれ、マッシュの腕に抱かれてすやすやと眠っている。メリアドールに見送られながらマッシュとレインは新たに加わった家族を連れてゆっくりと歩いて家に帰る。
この子の人生が幸多きになることを願いを込めて。
ただいま、ようこそ、我がおうちへ。