なにやら一際大きな揺れではたと目を覚ました。乗っているバスの車内アナウンスが、目的の停留所の一つ前に到着したことを告げている。
いいタイミングで起きたなと、しょぼついた目を擦り悪い姿勢と固いシートで凝り固められた首や背中を伸ばしほぐして人心地ついてからようやっと、なんだか全身に妙な疲労感があることに気がついた。肉体疲労もあるが、何より長いことしていた緊張からたった今解放されたような。そんな経験はもちろんないが、銀行強盗の現場に居合わせて、あわやというところで救助されたらこんな心地なんじゃないかと思うような感覚だった。不意に湧いた空想が、突入してきた警官に付き添われ宥められながら店外へ脱出する場面まで進んだところでふと思い出した。現実の僕の隣にも、同じように寄り添い守ってくれた人がいた気がする。それもつい先程まで。思わず見つめたバスの隣席にはもちろん誰もいないけど。
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