「レオン、聞いてる?」
蛇に睨まれた蛙、猫に対峙した鼠、ご主人様に叱られるしもべ。
「全然だめ」
「申し訳ございません」
「わたしの執事なら、もっとわかるでしょう?」
知っている顔と調査に行くためにご主人様は普段からは想像もつかないほど艶やかな黒いドレスを身に纏っていた。背中を大胆に露出し、白い腿がスリットからちらりと見えるその姿はまさに財閥を背負う者の佇まいだ。そんなご主人様の足元を彩るための靴選びを、失敗してしまった。ご主人様の顔は晴れず、脚は未だ裸足のまま宙を彷徨っている。
「すぐに用意いたします、五分程――」
「なぁに?それとも、レオンはまだお父さんの執事なの?」
真紅のペディキュアがつやつやと煌めく。ご機嫌斜めなご主人様は、跪くしもべの肩をフットレストに選んだようだった。
1430