侑北 号泣「ごめん」
「……なんでですか」
「俺は、侑をそういう風に見たことあらへんよ」
蕾をつけた桜の木の下、風が吹いてふわりと侑の匂いがした。好きな匂いに自分の嘘を一瞬だけ後悔する。一瞬だけは、この恋心の供養。これからの未来の為にここを振り切らなければ。
「そういう風に、見とってくれはったやないですか」
「なんや勘違いさせるような態度をしとったら悪かった。俺は卒業して居なくなる先輩で、お前はこれからここで気張らんとあかん後輩や。それ以上も以下も、なんもあらへん」
キッパリと言えた。けれど、目は見れなかった。視線は情けなく伏せられて、侑の大きな足元を見ていた。
――ん?
ポタ、ポタ、と地面に水滴が落ちる。雨の気配なんかない。おかしく思った北は地面から目線を上げると大きな目から大量の涙をたれ流す侑がいた。ギョッとしてしまい、思わず一歩下がろうとする北の手首が強く握られる。逃げるなと言うように。
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