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    ei_sheep49

    @ei_sheep49

    最近はK2沼(富K・K富)にいます

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    ei_sheep49

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    モブ視点のアイドル俳優パロK富K
    左右不定だけど富推しのモブが富かわいいかわいい言ってる

    推しよ、健やかに幸せであれ富永研太は超時空☆狸顔アイドルである。
    プリティーフェイスから繰り出される人懐っこい笑顔は、とても三十路半ばと思わせない。その年齢不詳さで超時空のあだ名を欲しいままにしている。いや、別に彼自身が欲しがった称号ではないが。
    見よこの20XX年ライブツアーブロマイドBを。成人男性にも関わらず、美少女と見紛うほどのつやつやお肌にきゅるきゅるお目目を。
    こんなに愛くるしい顔でいて、時折妖艶な雰囲気を魅せてくる。ギャップがたまらない。本業はアイドルだけれど最近はドラマ出演も多く、ある医療ドラマでの好演ぶりで演技の仕事も増えてきている。今の私の最推しだ。
    そんな彼は交友関係が広く、多くの友人がいる。
    その中でも最近ファンの間でちょっと話題なのが、前述の医療ドラマで主演を務める神代一人だ。

    (また”K”がライブきてる……)
    SNSに流れてきた黒ずくめの長身の隠し撮り。
    周囲のファンから文字通り頭ひとつ抜けていて、めちゃくちゃ目立ってる。間違いなく彼だ。
    ちなみに”K”は、医療ドラマでの神代の役名である。富永があだ名のように彼をそう呼ぶので、飼育係(※富永ファンのこと)の間でもK呼びが定着している。
    舞台俳優中心のKと、アイドルからお芝居に挑戦中の富永。畑違いの2人だけれど、ドラマで共演してよっぽど馬が合ったのか、プライベートでもしょっちゅう遊んだり、お互いのライブや舞台に足を運ぶ姿がよく目撃されている。戦友尊い。ちなみに”戦友”という2人のコンビ名もこの医療ドラマが由来だ。詳しくは今夏発売の円盤を確認してほしい。いやできればシリーズ1話から見てほしい。新米医師役の富永が大変愛らしいので。
    さて、Kは長身なので、かつて後ろの席に当たったファンは不運だと思われていた。だが今は違う。
    Kの周囲の席は、神席になるのだ。
    今回はZepp XXの2階席端。普通ならそこまで良席とは言えないが、どうだろう。
    隠し撮りと一緒にアップされていたレポートを開く。
    『1曲目。席全体を見回しながらスマイル大盤振る舞い。Aメロ途中で研太2階席に気付く。困ったように笑って指差し。悲鳴があがってKの方見たら穏やかな笑顔でペンラ振ってた。』
    開幕早々ファンサが飛んできたようだ。
    その後も、曲ごとにちらちらと目線をもらった様子が書かれている。
    特に、富永が個人的に某医療ドラマをイメージして歌詞を書き下ろした、と公言しているしっとりとしたバラードでは、ラスサビでしっかりとこちらを見つめて歌い上げたという。
    (そりゃ見ちゃうよな……)
    あの曲の歌詞は、どう考えても作中のKと、神代個人への憧憬が込められている。
    何しろ富永が演技の道を志したのは、神代の舞台を見たことがきっかけなのだ。
    ドラマでの共演も、最初は緊張して仕方がなかったそうで、見かねたKからサシ飲みに誘われたときに気絶しかけたエピソードは瞬く間に拡散されていた。
    緊張がとけてからの懐いてまわる様は人懐っこい柴犬のようだったと監督のインタビューでも触れられており、ファンの間でその好き好きっぷりは有名である。
    それを良く思わないファンもいないとは言えない。が、富永は基本的に視野が広くてファンサも満遍なく、遠目の席やライビュ・配信勢にもマメに声かけしている方だ。今回もあからさまなのは1曲目とバラード曲のみなので、研太モンペ飼育係としては(我慢してちゃんとライブできるのえらすぎでは???)と称賛したい気持ちが湧いてくる。
    ひとまずライブレポにいいねを送り、夜のライブ配信を楽しみに仕事に戻った。
    なんと今夜は、ライブツアー終了記念・Kとの特別対談ライブなのだ。

    ■■■

    「こんばんは〜。皆、夕ご飯食べた? 俺はねぇ、この人と餃子食べてきましたよ~」
    「配信があるので酒はおあずけです」
    「思い出させないで! 飲みたくなってくる!」
    夜だからか、すこし穏やかなトーンでゆるやかに配信が始まった。
    明るいけれど人をほっとさせるような低音に、仕事の疲れが癒されていく。
    早速Kとじゃれ合うのが微笑ましい。ていうか夕飯一緒だったのか。仲いいな。
    「今日は突然の告知だったけど皆来てくれてありがとうね。わわ、どんどん増えてく」
    「ライブ後すぐの熱も冷めやらぬうちに、だからな。今回も素晴らしかった」
    「ああ、そのことで貴方に言いたいことがあるんですよォ」
    「ム?」
    相変わらず武士みたいな喋り方だ。
    富永推しなのでKについては富永関係のことしか知らないけれど、普段からこうなんだろうか。
    「まあそれは後にして、まずは本題、ね。ライブの裏側とか感想から話していきま~す」

    ツアーでまわった土地土地の思い出。セトリに込めたこだわり。衣装やスタッフさんとの裏話。
    ファンにはたまらないトークは、意外にも聞き上手なKの相槌も手伝って流れるように進行していく。
    「それで……そう! ツアー△日目のZep XX。Kェ、来てましたよね。2階席で」
    「よく分かったな」
    「分からいでか! いい感じに人数いるし、聞いてくれてるひと、証人になってね。僕、怒ってるんですから」
    富永の眦がきゅっと上がる。どうやら真面目な話のようだ。
    にわかに怪しい雲行きに、コメント欄もざわつきはじめる。
    「K、いつもライブ来てくれるから関係者席に招待するって僕、言ったじゃないですか。今回も。でもあんた、スケジュールが厳しそうだからって断ったでしょう」
    「そうだな」
    「でも来てたじゃないですか。あれは噓だったんですか」
    「いや、誘ってくれた時、スケジュールは本当に厳しかった。運良く空けられたので無事に来られたのだ」
    「……結構、無理してくれたんでしょう。今日の配信だって」
    ふにゃりと富永の眉が下がる。
    ころころと変わる表情は、こんなシチュエーションでもたまらなく可愛いのだが、今は剣呑な雰囲気でそっちに集中できない。後で見返す用にスクショだけしておく。
    「だけど、それなら尚更、関係者席で来てください。貴方の分の席で、来たかった人がいるかもしれないじゃないですか」
    「だが、ズルいだろう。俺は関係者である以前から富永のファンだ。お前のライブには純正なる抽選で赴きたい」
    「う、ぐぅ~~~~」
    おや。風向きが変わってきたぞ。
    心なしか、富永の目が潤んでいる。
    コメント欄も『研太顔赤くない?』『照れてる』等と加速している。
    「言ってはいなかったが、ドラマで共演する前からお前の歌を聞いていたし、会員番号も2桁だ。本当は1桁で取りたかったがな」
    「なんっっで今言ったの!?」
    富永が立ち上がり、上半身がフレームアウトして、すぐに戻ってきた。
    着席たすかる。
    「ちょ、もっと早く言ってくれればっていうかそれ後で詳しく追及させてください絶対ですからね……!!」
    「ああ」
    富永の声が震えている。
    してやったりと言わんばかりのKの微笑み。うわこの人顔いいな。
    なるほど、視聴者を証人にお説教をするはずだったのを、逆手にとったのだ。
    完全にKOされた富永は、真っ赤な顔を隠すためかクッションを押しつけて丸くなっている。
    可愛い。三十路半ばとは思えない。
    クッションからはみ出た頭頂部を、Kがわしわしと撫でた。猫かわいがりならぬ犬かわいがり、いや狸かわいがりか。見せつけてきやがる。
    「うう……でもォ……あんた背ェ高いし後ろの人かわいそうでしょ……」
    「それはそうだな。出来るだけ段差のある席でだけ立つようにはしているが」
    「じゃあ関係者席きてください……」
    「だがコメントで『神代さんの周り神席になるので大丈夫です』とあるぞ」
    意外とマメにコメントを見ている。
    富永が顔を隠している分、気を遣って読み上げているのかもしれない。
    「ほらァもうあんたが来たら贔屓しちゃうのバレてる! これは俺が悪い!!」
    クッションを抱いたままがばっと天を仰ぐ。
    (自覚あったんだなぁ)
    だからこそ意識的に全体を見るようにしているのだろう。
    「でも目ェいくでしょあんなデカいのいたら!」
    やけくそ気味に富永が叫んだ。
    それは本当にそう。周囲が平均身長の女性で固まっていたら約30cm――頭ひとつ分は高い。ただでさえ隅々まで気を遣ったパフォーマンスがウリの富永なら、尚更目につくだろう。
    「ム……デカいとはなんだ」
    「えぇ、なんで背ェ高いは良くてデカいはだめなんですか」
    完全に毒気を抜かれた富永が、ふにゃりと弛緩してKの肩にもたれかかる。
    クッション抱っこ肩こてん上目遣い成人男性。あざとい。そして距離が近い。
    「虫とか動物みたいだろう。この間も龍太郎が、俺を熊とまちがえて……」
    「ふふふ、熊! どんな状況ですかそれ。あ、龍太郎くんはKの劇団でおなじみの……」
    空気が和やかなムードに戻っていく。
    結局、関係者席論争は富永の負けということだろうか。
    個人的には、Kを見つけたときの、ぱぁっと輝くような笑顔がなくなるのは惜しいので、よかったなと思う。

    さて、この関係者席論争。
    まさかまさかの十年越しに、掘り起こされて日の目を見ることになる。

    ■■■

    子どもの寝かしつけを終えて、夜の配信に備える。
    金曜夜なので多少の夜更かしは許してほしい。
    それにしても、ライフスタイルが変化しても追いかけることになるとは、ハマった当時思ってもみなかった。忙しい毎日だけれど、富永研太は大事な潤いで、励ましなのだ。
    「よいしょ……声、入ってるかな? どう?」
    音声に問題ない旨のコメントが流れていく。
    目じりの皺が若干増えたものの、変わらず愛らしい笑顔が目の前に映し出される。
    思わず缶チューハイのプルタブをひねり、ぐびりと煽る。この顔だけで三杯はいける。
    「よかった~。ライブ配信久しぶりだからね。そう、引っ越しも終わりました。今日はこの人も一緒です」
    「こんばんは。神代です」
    ぬっと現れた美丈夫。富永と同じく、魅力的に歳を重ねた神代一人そのひとだ。
    「会見後初配信だからちょっと緊張するなァ」
    「そうだな。お前のファンに恥じないよう、俺も身が引き締まる」
    「ふふ、あんたはどこに出しても恥ずかしくないじゃないですか」
    「お前こそ」
    早速いちゃつきを見せつけてくる。ペースが早いぞご両人。こちらもガソリン(酒)を入れねば正気で見られない。頬っぺたが勝手ににやけてしまう。
    そう。ついこの間の会見で、2人は結婚を発表した。
    同性婚が法的に認められてから、しばらく経ってのことだった。
    「これでもう関係者席ダメとは言わせません!」
    「あったなそんなことも」
    「まあ、もうあんたが席のどこにいようが動揺しませんけどね。見慣れてるので」
    得意げなどや顔で、左手薬指を画面に大写しにする。
    男らしく節くれだった指の第2関節に輝くは、Tファニーのブライダルリング。
    幸せそうで何よりである。
    会見では、長いこと伏せていた交際を明らかにすることも、結婚も、随分悩んで相談を重ねたと語っていた。大変な時間は無かったことにはならないし、活躍の場が広い2人だからこそ、今だって困難はきっと多い。それでも、ファンに、世間に、それらを見える形で分け与えてくれた。並大抵のことではない。
    こうして見せてくれる笑顔の裏側を、すべて知ることなんてできないけれど。
    「こうして同じ家に帰り、日々たくさんファンサをもらっている……飼育係の皆には申し訳ないな」
    「だからですか? 俺の隠し撮りSNSにあげるの。あっ、ごめんね皆同意だからね!?」
    神代は、交際を発表してからSNSに写真をあげるようになった。
    そのどれもが、富永本人や、彼との生活を写したもの。自然でなにげない日常のかけらだ。
    「この人真面目だから、いちいちこれあげていいか?って聞いてくるの」
    「当たり前だろう」
    「ふふ、そうですね」
    ふにゃりと微笑む富永の耳がほのかに赤い。
    のろけられている。
    (かわいいなぁ)
    昔と変わらずそう思う。
    元気になる。
    よかった。結婚しても、推しは推しだ。
    酒をもうひとくち。
    スマートフォンのちいさな画面の中で、カメラに向かって話す富永を、神代が愛おしそうに見つめていた。うむ。これだけで五杯はいける。
    配信はまだ始まったばかりだ。
    新しい缶を補充するべく、スマホを片手に立ち上がった。
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