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    RioN__88

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    RioN__88

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    風信×扶揺です。
    こちら地獄の3本目。
    相変わらず初心者が書いた文字なので薄目でご覧下さい。
    次回きっと漫画でハッピーエンド。

    風信サイド視界の端にサラリと揺れる艶やかな濡羽色。
    それはいつだってアイツのものだった。
    共に南方を守護する武神。玄真将軍、慕情。
    それこそ何百年と、ただの人であった頃からそうだったし、いつも視界の端で揺れる黒は密かに美しいと思っていた。

    いつからだっただろうか。
    その黒にもう1人を探すようになったのは。
    初めは、主人に随分とよく似た小神官を連れているな、と思った。それだけだった。

    関係を持ったのは、所謂魔が刺したのだ。
    見慣れた黒に良く似たそれに、触れたくなった。
    ずっと触れてみたいと思っていたのかは、正直自分でもよく分からない。
    一度触れてしまえばもう後はキリが無かった。

    ふと、視界の端に揺れる黒髪に手を伸ばす。
    触れる瞬間、その主が振り向く。
    「…慕情?」
    (扶揺かと…思った)
    振り向いた慕情は、何故かこちらを憐れむように見つめて煙のように消えた。

    あぁ、そうかこれは夢か。


    目を覚ますと隣に扶揺は居なかった。
    気を失っていた筈だが、目を覚まして自殿に戻ったのだろう。
    ふと先程までこちらを悔しげに睨みつけていた黒曜石を思い出し、さっきまで触れていたというのに、急にあの生意気な顔が見たくなった。
    今度会ったら茶にでも誘ってみようか。
    急にどんな風の吹き回しだと、主人によく似た表情で白目を剥くのだろうか。その顔を想像して、少し可笑しくなってもう一度目を閉じた。
    窓からはまだ月明かりが差していた。


    下界での公務と報告を済ませ、自殿の執務室に向かっていると、聞き覚えのある声が鼓膜を揺らした。
    「扶揺?」
    丁度よかったと思い、声が聞こえた方を覗き込むと、そこに居たのは南風と扶揺だった。
    2人はこちらには気付いていないようで、何やら言い争いをしている。
    「どうしてお前はそうなんだ!?こっちが心配しているのが分からないのか!?」
    「余計なお世話だ!誰もそんな事頼んじゃいない!」
    あの2人が言い争いをしているのはいつもの事なのだが、どうやらいつもと様子が違う。
    南風は扶揺の右手首をつかみ、掴んでいない方の手で逃げ道を塞ぐように壁に手をついている。
    その光景を見た途端、さっきまでのどこか浮かれた気分が一気に黒いものに塗りつぶされていくのを感じた。
    「おい」
    「「…!」」
    急に声をかけられ、2人同時に肩を跳ねさせる。
    「そんなところで何を騒いでる。」
    南風の方を見て問うと、苛ついているのを感じたのか、「いえ、何でもありません。騒がしくして申し訳ありません」と言って拱手すると、チラリとだけ扶揺の方を見たが、何も言わずにそのまま下がって行った。
    その場に残された扶揺は、見られてはまずい場面だったとでもいうのか、気まずそうに目を逸らす。
    その様子を見て更に己の苛立ちが募っていくのが分かる。
    「南風と何をしていた?」
    「南風も言っていたでしょう。何でもありません。」
    扶揺は目を逸らしたまま答える。
    「言えないような事なのか?」
    「意味が分かりません。ご心配なさらずとも南陽将軍には関係の無い事です。まだ遣いが残っていますので失礼します。」
    俯いて拱手しながら淡々と告げて立ち去ろうとする扶揺に、もはや我慢の限界だった。
    「待て。」
    「…まだ何か。」
    「今夜、俺の部屋に来い。」
    「………分かりました。…失礼します。」
    苛立ちは当分収まりそうになかった。



    正直、やり過ぎたとは思うし流石に申し訳なかったとも思う。
    自分でも何故あんなに頭に血が上っていたのか分からないのだ。
    ただ、今自分の下に横たわって意識を失っている扶揺は…まぁ言ってしまえば酷い有様である。
    目元は泣き過ぎて真っ赤になって少し腫れているし、ずっと掴んでいた右手首には南風に掴まれた時には無かった筈の痣がくっきりと付いている。いつもは白磁のように白く滑らかな美しい肌にも、大量の鬱血痕が散らされていて見ていて痛々しい。
    ただ、どうしても南風に触れられているのが許せなかった。自分には関係無いと言われたのが気に入らなかった。
    思い出せば最中の扶揺はずっと「どうして、ごめんなさい」と言いながら涙を溢していた。
    こんな風にしたかった訳ではなかったのに。
    本当は茶にでも誘って、出来れば少しでも良いから笑顔を見せて欲しかった。
    途端に、酷くしてしまった罪悪感が込み上げてきて、意識の無いぐったりとした身体をそっと抱きしめる。
    「…ごめんな」
    届かないと分かってはいても、口に出さずにはいられなかった。
    その時、眠っている筈の扶揺の瞳からまた一粒涙がこぼれた事には気付けなかった。
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