清い 正しい 美しい 見送りの切符というものがあることを悠仁ははじめて知った。ちゃんと券売機に『入場券』というのがあって、それが見送りをするひとのための切符なのだ。
新幹線のホーム、隣を歩く男はまっ黒のスーツを着ていて、けっしていいとはいえない顔色、一見喪服かと思うがネクタイが黒くないので喪服ではないことがわかる。悠仁のまったく趣味ではない、なんとなくギラギラしたネクタイ。でも金髪のこの男にはこのネクタイがものすごくよく似合い、そういう男のことを、悠仁はそれなりに好きになりかけていた。好きという感情は、自分でどうこうできるものではない、舵のこわれた舟のようなものだ。男の名前を七海という。きれいだと思う、名前も、金髪の髪も。
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