瓢箪――犬王――の初舞台は、大盛況だった。犬王の腕の呪いが解けたことで、必然とそこで舞は仕舞になったのだが。
観衆たちの大半は、犬王の異形の長い腕を舞台の仕掛けだと思い、その仕掛けが壊れたのだと解釈していた。そして、義手を作り、舞台の準備の始めからすべてを知っている一部の者たちは、そんな観衆に何も言うことなく、犬王をただ見守っていた。
「おお、おお。腕だな」
「おう、これが俺の尋常の腕だ」
友一は、破れた袖から伸びる腕をひとしきり撫でまわした。
この世に生まれ出でたばかりの肌は、傷を知らぬ赤子のようななめらかさ。しかし、しっかりとした骨やしなやかな筋肉は、この腕が紛れもなく青年の、犬王のものだと告げていた。
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