無題 先日アハウとキィニチは恋人という関係になった。だからといって特別な変化がある訳じゃなかったが、距離は多分そういう関係になる前よりは近くなっているんだろう。
「キィニチ、番になったらするべきことがあるだろ?」
「またその話か、俺は子供を産めないって言ってるだろ。閨事をする意味が無い」
「だから子孫を残せなくてもいいって言ってんだろ!我輩にその身体を味わせやがれちびニチ!」
恋人になってからアハウはずっとこんな感じでキィニチに閨事をさせろと訴えていた。キィニチにそういった欲がない訳じゃない。けれどどうしたって竜と人との閨事には多くの問題がある。体格差は勿論アハウは絶対に挿入する側を譲らない事は言うまでもなく分かる事だ。そうなれば俺は男でアハウの熱を受け入れる女性器もなければ子孫を残す場所もない。大体なんでアハウが閨事をしたがるのか理解出来なかった。女性のように豊満な身体でもなければ柔らかくもない。こんな身体を抱いて何が楽しいのかキィニチには分からない。
「無理だ、執拗いぞアハウ」
「だー!!!いい加減折れろ!!」
何度望んでも断られる事に痺れを切らしたのかアハウは角張った顔を赤くして叫んだ。しかしアハウの大声を聞き慣れているキィニチにはなんの効果もなく、無視を決め込んだキィニチはさっさと寝床に横になってしまった。アハウが人間で自分が女性だったら、もしくはその逆であれば可能性はあったかもしれない。そんなことを考えながらキィニチは暫くして眠気に揺られアハウの騒ぐ声を聞き流しながらゆっくり意識が沈んで行った。
身体が熱い。苦しい。まるで腹の中を何かが暴れているような感覚に段々と意識が浮上する。薄く目を開けるとぼんやりと何かが映る。それは人の輪郭を型どっていて黄色い髪が特徴的だった。…と、そこでようやくキィニチの意識が急浮上した。
「は、っ……?」
「やっと起きたかちびニチ」
声や口振りはアハウそっくりだがいつものようなドット絵のような姿は無くキィニチにそっくりな人間がそこにいた。髪色や頬に付いたバツ印のマーク、瞳の色以外はキィニチと何ら変わりない人間がアハウであるという事実にキィニチの目は丸く見開いたまま数秒固まってしまった。
「アハ…っゔ……?!」
ようやく口を開いた瞬間、腹の中から異物感を感じて目線を下げたキィニチは絶句した。違和感を感じた腹よりももっと下、琲世器官にアハウが指を突っ込んでいたのだ。状況を理解した事で本来何かが侵入することの無い場所を指で押し広げられる異物感がキィニチの中に湧き上がる。
「なにッ…してる、あはう…!」
「何って見りゃ分かんだろ?閨事の下準備だよ」
苦しげな声に顔を上げたアハウはけろりとそれに答える。こんなのが閨事の準備?キィニチは疑問と尚も動き続ける指に怒りが浮かんだ。閨事はキィニチが知る限り朝からやるものではない。何か逃げる方法はないかと思考を回す。
「ふざけ、るな……っ、今日は、依頼が……」
「あ?今日中にやらなきゃいけない依頼なんかねぇだろ。逃がすかよ」
とりあえずその場から逃げるのが優先だと布団の上を這いずってみたが言い訳も抵抗も虚しく身体を押さえ付けられてしまった。
「いつまでもオレが我慢してやると思ってたのか?」
「はっ……、ッく…やめ…っ……」
「我が従者よ、諦めて身を委ねた方が楽だぞ?」
睨み付けることすら意味はなくナカの肉を掻き分けて探るような動きを繰り返すアハウは仕方ないなとキィニチの硬くなった熱の塊を握った。ひっ、と小さく上がった悲鳴に僅かな支配欲を擽られたアハウはニィと口角を上げながら手中にあるキィニチのモノを扱いていく。
「あ、ッう?あはう、〜〜っ……♡」
キィニチは快楽に弱くモノを数回扱いただけでナカに埋まったままの指を締め付けながら背中を丸めて震えた。声を出すまいと唇を強く噛み締めて早くもその顔は汗ばみ赤く染っていた。
「ふッ…く、……♡ッは、あはゔ」
羞恥から来るものかプライドから来るものか分からないが如何にも機嫌が悪いという声色だった。しかしアハウが手を止めることは無く扱きながらナカを解すように動かした。
辛抱強く解している内にどのくらい経ったか分からない頃にキィニチは等々耐えられなくなったのか声を抑えるのを辞めた。
「あっ、あ…はーっ……♡い、くっ…ふぐッ…ゔッ…♡♡♡」
何度目かの射精で色を失い始めた精液はアハウは満足そうに眺めている。それでもキィニチは快楽に弱い割にまだナカで快楽を拾う様子は無く、射精だってモノを扱いてやってるからだろうとアハウも理解していた。すっかり脱力したキィニチを見詰めながらどうしたものかと指を適当に動かしていた時ふと出張った所に指が触れた。
「ッっ〜〜〜〜???♡♡」
ソレに触れた瞬間キィニチの身体が面白いくらいに跳ねた。驚いて目を丸くするアハウに対してキィニチはチカチカと点滅する視界と痺れるような快楽に息が詰まった。その快楽は外から与えられる物じゃないことぐらい自分の身体なのだから理解出来る。
「……キィニチ、もしかして今キモチイイって感じたのか?」
驚いていたアハウは悪知恵が働いた時に人間がする表情を浮かべている。それに気付いたキィニチが制止の声をあげるよりも早くアハウはもう一度その出っ張りに触れた。今度はさっきよりもやや強く、押し込むような感じで。
「!?♡♡ッ、っは、ゔ…まてッ!♡」
「にしても我が従者は快楽に弱いな。これならもう少し快楽を与えたあと我輩のモノも受け入れられそうか?」
まるでキィニチの言葉なんて聞こえていないような様子で指を二本、三本と増やし音を立てながらナカを解していく。痼をトントンと優しく叩いたかと思えば指で挟むように摘んだりグリグリと押し込んだり、その度にキィニチの身体は仰け反るのだからアハウは新鮮なキィニチの反応が面白くて仕方がないのだろう。
「かひゅ、ッ…も、ゆるひへ…♡♡」
いくら快楽を拾うとは言え初めての行為でナカだけで達する事が叶うはずもなく快楽はキィニチの腹の中で渦を巻き積み重なっていく。ずっとふわふわと宙に浮いているような快楽が耐えないまま等々キィニチの目から涙が零れた。
「おい、どうしたんだ?」
まさかあのキィニチが泣くとは思っていなかったのかアハウもらしくなく焦った様子を見せる。一度指を抜いてやるとキィニチはそれでも気が落ち着かないのかアハウに抱き着いた。
「……い」
「あ?聞こえねぇよ」
「腹が、熱いんだ…助けてくれ…」
驚愕。さっきから普段のキィニチらしくも無いことばかりだ。ここまで快楽に弱いとは思っていなかった。が、そう言われたからには叶えてやるのが筋だし元々そのつもりだったアハウは目を細めた。いっそこれを機に自分から求めるようにしつけてやるのもいい。
「はぁー…おいキィニチ、煽ったのはお前だからな。後で文句言うなよ」
キィニチの気が変わる前にさっさと入れてしまおうとアハウは服をその辺に捨て去り痴態を見て勃ち上がったモノをキィニチの後孔に宛てがった。キィニチの表情を見ると不安の中に抑えられない期待と熱が含んだ瞳でアハウを見詰めていた。これ以上焦らすのは自分にも影響すると感じたアハウはゆっくりとキィニチのナカに自身のモノを沈めていく。
「フーッ、……っゔ…」
指とは比べ物にならない質量にキィニチは苦しげな表情を浮かべる。さっきの快楽はそこに無く、肉を割って押し進む異物感に息が詰まる。
「…はゔ、ッむりだ、入らない」
「はぁ…ッ、入ってんだろ?ちょっとは我慢しろちびニチ」
とはいえアハウも気を抜けばナカに出してしまいそうな締め付けに息を吐いて耐えていた。キィニチが力を入れている限り搾り取られそうだと考えたアハウは奥に進むよりも先に指でキィニチが感じていた場所を狙って突いてやることにした。
「確かここら辺だったか?」
「、ッ♡ひっ、やら、ッやだ♡♡」
「もうこれが癖になっちまったのか?お前の肉がオレのをぎゅうぎゅう締め付けてやがる」
「ッ…♡〜〜〜〜ッ♡♡♡はひゅ、…は、ゔ♡♡」
ごりゅ、ごりゅ、と痼を押し潰す度に耐え切れず開いた口から可愛いとは言えない声が溢れ出る。しかしアハウに取っては普段すました顔をしているキィニチの乱れた様子は充分興奮を煽るもので苦痛の見えなくなった表情を見て痼を押し潰しながら奥へと進んでいく。
「かひゅ、ゔ、ひッ♡♡やだ、ッ…ふぎ…、ぐやろッ♡♡♡」
「ったく文句が多い従者だな、少し黙ってろ」
気持ちがいい癖に否定の言葉ばかりを並べるキィニチの唇にアハウは喰らうように自分の唇を乱暴に重ねる。咄嗟に閉じた唇を割開いて舌をねじ込むと人間よりも長い舌でキィニチの舌を捕まえてじゅ、じゅる…と水音を立てながら激しく舌を絡め合わせた。
「ん、はッ…♡ッ……く、はふッ…はッ♡」
舌を絡めていくうちにキィニチの身体から力が抜けて甘い声が洩れ始める。瞳はトロリと熟れて汗ばんだバンダナを外してやると下がった眉が露になった。 ゾクゾクとアハウの中に独占欲と優越感が沸き上がる。湯だったみたいに思考が回らなくなって夢中でキィニチの身体を貪る。本能がこの胎に子種を植え付けろと叫んでいた。
「ぐるるッ……はぁ、ッ…キツいな」
「ぷはっ、、あッ♡ひぎ、ッ…ゔ〜〜ッ♡♡あはゔ、ッ…イきたい、いきたッ♡♡」
「まだ待てだ、キィニチ」
キィニチの限界を聞いて自分も中に種を付けるために奥へ奥へとモノを進める。コツン、と奥に当たりそこを突いてやると段々と柔らかくなりぐにゅりとした感覚にまだ奥があることを知る。
「ふぐッゔ♡、ッ……ッく♡♡」
「ッはー、まだ奥があんのか?」
「は、ッゔ?♡、ッやだ、そこ…なんかだめだッ♡♡」
そこを押し開けるように腰を進めるとキィニチの反応が慌てたようにシーツを蹴り始めた。そこがイイ場所だと分かったアハウはキィニチの身体を抱き締めて身体を密着させたかと思うと逃がさないように奥の壁、結腸の入口をぐりぐりと捏ねるように腰を動かしていく。
「ひゅッ…〜〜〜〜ッ♡♡♡」
ぐぽっ、とおおよそ人からなっては行けない音が腹の奥から鳴った。かと思えば抱き締めているにも関わらずキィニチの背は反れて足がピンッと伸びた。より強くなった締め付けに歯を食いしばって耐えながら顔を上げるとキィニチは上を向いて短く息を上げている。晒された喉仏に牙を立てたらコイツはどんな反応をするんだろうかとアハウはふと気になった。しかし契約上アハウはキィニチを殺せない。だから殺さない程度に、力を込めて喉仏の少し下に噛み付いた。
「ぐ!?♡、ッは、ゔ…♡♡、はッゔ…ッは♡」
噛み跡から滲んだ血を舐めとって再びナカを蹂躙する。今度はキィニチのモノを扱いて一緒に達するために奥へとモノを打ち付けた。
「……く…キィニチ、出すぞ。我輩の子種をしっかり身体で受け止めろ…ッ」
「め、ッろ♡まっで、、っ…ばゔッ♡♡ッ〜〜〜〜♡♡♡♡」
腰が付くぐらい奥を抉って大量の精子を吐き出した。それと同時にキィニチのモノから勢い良く透明なサラサラとしたものが吹き出た。アハウの精子で腹は微かに膨れシーツや身体はキィニチが吹き出したものでべちゃべちゃに汚れてしまった。
「フーッ…はぁ、あ?……やり過ぎたか」
アハウが射精を終えた後モノを抜いてキィニチを見るとピクピクと痙攣したまま意識を失っていた。それにしてもまさか漏らすなんて思わなかったとアハウはシーツを適当な布に変えてキィニチを寝かせてやった。抱いたことに後悔はしていないがキィニチのナカが思ったよりも気持ち良くハマってしまったかもしれないとアハウは頭を抱える。だが悪い気はしない、キィニチの身体を乗っ取るその日まで精々その身体を愛してやるのも良いだろう。そんなことを考えながらアハウはキィニチの横で眠りに着いた。
「……何か言うことはあるか」
「いってぇな!!起きて即殴る奴がいるか!!?」
「うるさい、一週間飯抜きだ」
「なんッ…!おいキィニチ!!けちんぼ爬虫類!!!」
夕方、山にはいつもの五月蝿い声が響いていた。初めての行為の後起きられなくなったキィニチをアハウが煽り殴られたのだ。恋人とはいえこの二人の関わり方はあまり変わらない。それがアハウと言う聖龍とキィニチという人間だ。
ちなみに漏らしたものが尿ではなく女性が絶頂を迎える時に吹く潮と言う事を知るのはもっと先の話。