メイドに恋したおぼっちゃま12月31日23時過ぎ。
きぃ…と扉が静かに開いた。
「…………誰もいない。よしっ」
アルジュナは辺りを見回すと目的の場所まで早足で向かった。
*
向かった先は浴室。
脱衣所の扉を開けるとブラシを擦る音が奥から聞こえる。
アルジュナは靴下を脱いで浴室の扉を開けた。
「リツカ」
浴室を掃除しているメイドに声をかけた。
「えっ!? アルジュナ様!?」
メイドのリツカが驚きの声をあげた。
「どうしてこちらに? もうお休みの時間ですよ?」
「そ、そうだけど……リツカだってもう休みの時間だろ?」
「いえ、私は明日の祝賀パーティーの準備がまだありますから……あぁ、もしかして明日食べたいものがあるから声をかけてくれたのですか? ふふっ。ビーマ様も楽しみになさってますからね」
「ち、違うよ。そうじゃなくて……リツカと……」
「はい?」
「リツカと一緒に……年を越したい……んだ」
アルジュナの顔が真っ赤になる。
「……わたしとですか?」
「…………うん。最近リツカは忙しくて傍にいてくれないから……今なら大丈夫だと思ったんだ。だから、その……」
「分かりました。掃除はもう終ったので、アルジュナ様のお部屋に行きましょう」
リツカがアルジュナの手を握る。
「! ほ、ホント!? パーティーの手伝いは?」
「準備はほとんど終わってますから……明日朝イチに最終確認すれば大丈夫ですよ」
にこっと笑みを浮かべながらリツカは答えた。
「じゃ、じゃあ、部屋に戻ったらいっぱい話をしようよ! 僕、リツカに話したいことがたくさんあるんだ!」
目を輝かせながらアルジュナはリツカの手を引っ張り、駆け足で部屋へと向かった(良いお年を)