彼と彼女(遊戯王ARC-V ユーリ→女夢主)桜が散り始めたある日。
誰もいない校舎裏に少年と少女が立っていた。
「わ、わたし、ユーリくんが好きです!」
少女の発した声とともに木々が揺れ、桜の花びらが散っていった。
「へぇ、僕のこと好きなんだ。ありがとう」
告白された少年・ユーリは笑みを浮かべながら答えた。
「えっ? えっと……?」
ユーリの返答に少女は困惑した。
「なーんてね。僕、キミに興味ないし。そもそも僕と話したことあるっけ?
ないよね? じゃあ、ついでに他の子達にも言っといてよ。僕の時間を取らせるなってさ」
「…………」
「なに、その顔。僕だって嫌だったよ。でもユメの頼みだから仕方なくキミの話を聞いてあげたんだ」
「ユメ? なんでユメが出てくるの?」
怒りを含みながら少女は尋ねた。
「ククッ、アハハハッ。
いいねぇその顔。あぁ、なんでユメの名前を出したかって?
だって僕はユメのことがだーいすきだから!
ユメのお願い事は何でも聞いてあげるし叶えてあげるんだ。
そうそう、キミの話を聞いてほしいって言った時の不安気なユメ、すっごく可愛いかったんだよ」
「……知らないの?」
「は? 何が?」
ユーリの顔が歪む。
「……ユメ、彼氏……いるよ」
「…………」
「…………」
ざぁ…と桜の花びらが一気に散っていく。
「うん、知ってるよ。同じクラスの×××。
クククッ。キミとユメしか知らないと思った?
残念でしたー。僕はユメのことならなーんでも知ってるんだから。
あっ、ちょうどいいや。ユメ、近くにいるんでしょ? 僕もユメに大好きって言いに行こうっと。
でもその前に―」
ユーリはデュエルディスクを取り出した。
「邪魔なキミはカードになってもらうよ」
「えっ!? な、に―」
言いかけた少女は一瞬にしてカードとなり地面に落ちた。
「僕、ユメのことが好きなんだ!
……うーん、なんかありきたりでつまらないなぁ。
僕、ユメがだーいすきっ! 僕らずーっと一緒だよ! うん、これでいこっ。
フフフッ。今から会いに行くよ、ユメ」
ユーリが去った後、風が吹き荒れ桜の花びらとともに少女のカードも夕暮れの空へと舞っていった。
*
(……×××ちゃん、遅いなぁ。様子見に行こう)
校舎内で待っていたユメが外廊下へ出ると―
「やぁ、ユメ。どうかしたの?」
不敵な笑みを浮かべながらユーリが目の前に現れた(END)