何でも知ってる榊先生(遊戯王ARC-V ユーリ×女夢主)―ある日の昼休み。
ユメは友達と昼ご飯を食べ終わり、教室へ戻るため廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。
声をかけてきたのはユメの担任教師だった。
「微睡さん、榊先生が呼んでたよ」
「榊先生……ですか?」
榊先生は保健医で、ユメとの接点は皆無に等しい人だ。
(保健の先生がわたしに何の用なんだろう?)
「ほら、昼休みが終わちゃうから早く保健室に行きなさい」
「は、はい。分かりました」
担任に急かされて、ユメは駆け足で保健室に向かった。
「…………」
*
コンコン
「し、失礼しまーす…」
ユメは恐る恐る保健室の扉を開けた。
(……そう言えば、保健室に入ったの初めてかも)
扉の前に立ち、辺りをキョロキョロ見渡した。
目線の奥にはデスク、左側にはベットが二つ、右側には人体模型が置いてある。
「…………」
(榊先生いないのかな? どうしよう…次の授業、移動教室だから早く教室に戻らなくちゃ…放課後また寄ろう)
ユメが扉を開けようとした時―
「―待ってたよ、ユメ」
ガシッと扉を開けようとした腕を掴まれた。
「!! さ、榊先生……?」
「ごめんね、気がつかなくて。もしかして教室に戻ろうとした?」
にこっと笑みを浮かべながら榊先生は尋ねた。
「えっ、えっと…そ、その、次の授業が移動教室で…準備まだしてなくて……」
突然の出来事に戸惑いながらユメは答えた。
「あぁ、次の授業は移動教室か。大丈夫、担当の先生には言っておくから」
「? あ、あの、どういう意味―」
「ほら。せっかく二人きりなんだからこっちにおいで」
掴まれた腕を強引に引っ張られ、ユメはデスクの椅子に座らせられた。
彼女の目の前にはニコニコしている榊先生が座っている。
改めてユメは榊先生を見た。
(……榊先生、肌真っ白。イケメン先生なんだなぁ。ファンクラブがあるってのも分かるかも)
「早速だけどユメ。昨日はどうして学校休んだの?」
「えっ!? き、昨日……?」
「え?じゃないよ。休みってちゃんと確認したさ。ユメが学校休むなんて初めてだったからびっくりしちゃったよ。―で。昨日はどうして学校休んだの?」
「き、昨日は……目眩と頭痛が酷くて休みました」
(な、なんでわたしが休んだことを榊先生が知ってるの……?)
「成程。辛かったよね、今は大丈夫?」
「!」
榊先生がユメの両頬を触る。彼の手はひんやりと冷たい。
「だ、だ、大丈夫です!」
(さ、榊先生は、何がしたいんだろう……!?)
ユメの顔が恥ずかしさで真っ赤になった。
「そう。でも僕はユメの辛い顔は見たくないんだ。ユメには笑顔でいてもらわなくちゃ」
「さ、榊先せ―きゃっ!?」
「お姫様抱っこは初めてかな? そうだよね? 初めてじゃなかったら僕、怒っちゃうから」
榊先生はユメをお姫様抱っこし、ベットに連れて行った。
「せ、先生!」
「安心して。ユメが元気になれるおまじないをしてあげるからさ」
ベットにユメを降ろすと榊先生は自身の唇をユメの唇と重ねた。
「!!??」
動こうとするユメを榊先生は両手で押さえつけた。
「……ユメはいい子なんだから僕の言うことはちゃーんと守らなくちゃダメなんだよ。ねっ? ユーメ♡」
ユメの耳元で囁く榊先生はニヤッと嗤った。
「い、いやぁ……っ!」
*
「や、約束通り、微睡を、あ、アンタのところに行かせたぞ」
おどおどしながらユメの担任教師は目の前にいる榊先生に言った。
「えぇ、先生のおかげで助かりました。約束通り、アナタと他校の女性教師との不倫写真は破棄します」
榊先生はポケットからライターを取り出し、ユメの担任教師と女性教師が仲良く腕組みしている写真を燃やした。
「これで懲りたでしょう? まぁ、僕は面白いから続けてくれてもいいんですけどね」
にこっと嗤いながら榊先生はライターをしまう。
「…………」
ユメの担任教師は何も言わずに保健室を後にした。
「…………ククク。アハハハ! ホーントお間抜けさんだなぁ。僕が燃やした写真は一枚だけじゃないのに。他にも不倫現場写真撮ったんだよ? 手元にあっても邪魔だから奥さん、それに実家にも送ってあげたから。
アハハハハ。帰ったら修羅場だね~面白そう。
ねっ、ユメもそう思うでしょ?」
ベットのカーテンを開けると榊先生によって眠らせたユメがいた。
「まだ睡眠薬が効いてるんだね……それにしても可愛い寝顔。やっと手に入れられたからたーっぷり可愛がってあげるよ、ユメ♡
さて、用事も済んだことだし帰ろっか」
ユメをお姫様抱っこしながら榊先生は保健室を出た。
嬉しさのあまり鼻歌を歌いつつ、彼は彼女を車に乗せて自宅へと帰って行った(END)