🐛くんもどっちでもいい。 ただボクの顔をもとにもどしてくれさえすれば。周りのみんなは泣いている。シクシク、シクシク、虫みたいに。
ニンゲンたちがみんな帰った夜の話だ。
「カエリタイ」「モトニモドシテ」そんな声がひっきりなしに聞こえたりする。
そりゃあ、そうだ。ボクだってあちこちから出てくる虫たちには迷惑している。
それに、あちこち痒いし。
痒い、ああ、そうだ。
痒い痒い痒い…
何度も追いやっても次から次へと湧いてくる虫にイライラする。
帰る場所なんて、別にどこだっていい。
雨風防げれば、それだけでいい。
どこで寝ても同じだ。
この顔と体さえなんとかして貰えればなんだっていい。
ああ、今日も、痒くて痒くてたまらない体にイライラする一日が始まる。
虫くんもどっちでもいい。
ただボクの顔をもとにもどしてくれさえすれば。
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