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    柊木あめ

    ゆったりまったり創作したい_(┐「ε:)_

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    柊木あめ

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    本編『Lost In Blue』ありきの短編になります

    ミシェル視点の追憶。突発的にキールドとミチェの話が書きたくなったのでリハビリがてら書きました。

    #一次創作小説
    aCreativeFiction
    ##ろすと
    #一次創作男女

    【歩幅が違う】 貴方が作ってくれた長袖の白いワンピースの肌触りも、顔を隠す為のヴェールを留める紫水晶と銀の髪飾りの美しさも、静かな夜に響く波の音も、踏みしめたさらやかな砂の感触を、まだはっきりと憶えている。

     月光を反射して煌めく海面に、遠く浮かぶび手招く無数の黒い影。まるであたしを呼んでいるようだったことも、まるでつい最近の出来事かのように、憶えている。

    「おい、足元に気を付けろ」

     貴方は不安そうな声音で「波に攫われたらどうするんだ」と言葉を続けた。語尾に微かな濁りのある、夜の漣のように落ち着いた声音は心地良く、少しだけ意地悪をしたくなる。

    「大丈夫よ。だって、あたしは――」

     立ち止まり海を見た。昼間と違い、深い深い暗闇が遠く遠く、どこまでも果てしなく続いている。その水面はさながら満天の星空だ。

    「貴方より泳げるもの」

     深い深い水底で、一人寂しく歌っていた日々を思い出す。もしもあたしが人魚だと知れば、彼はどんな反応をするかしら?

    「肉を削ぎ落とした骨のような両手足で、俺よりも泳げるだと?」

     ふと彼の大きな手が片手首を掴む。ほんの少し力を入れられただけで、手首の関節が軋むのを感じた。

    「食事は十分に与えている筈だ。3日もあれば、それなりに肉が付くと思ったのだが……」

     手首を包む掌は袖を捲くりあげながら上へと滑り、指先は肉付きを確かめるように腕を揉み撫でる。

     触れたカ所から伝わる貴方の体温は、少しだけ、いつもより冷たかった。

    「帰りましょう」
    「……気は済んだのか?」
    「えぇ。少し冷えるわね。あたたかい飲み物が欲しいわ」
    「同感だ。とっとと帰ろう」

     そう言って彼は手を離して踵を返すと其の場に片膝を着いた。

    「お前が歩くより速い」
    「当然よ。歩幅が違うもの」

     あたしは小さく笑いながら彼におぶさる。

    「あぁ、俺はお前より脚が長いからな」

     誇らしそうに返すのが面白くて、少しだけ、羨ましかった。軽々とあたしを背負い歩く貴方の背中はあたたかくて、広くて、安心するの。

     顔を埋めた首筋から香る匂いは、あたしの心を癒し、落ち着かせてくれる。

      終
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    また来たよ。帰れお前のできることはもうないそいつと幸せになれ。できないよ。この子がレンジが次の継承者なんでしょう?だったらどうした。そいつはお前が好きだろちょうどいいじゃないか祝言をさっさと上げろ。そんなの嬉しくない。1人で全部背負われて全然嬉しくない。そいつの嫁になれ。わたしはあなたがいい。俺は役立たずだ。そいつの代にはもう力なんてなくなる。それでもいい。話して。次の継承者に。何も知らないまま継承させないで。第二のあなたなんか見たくない。やめろ。おいお前らこいつを連れて行け。ここはお前には危険だ。当主命令だ従え。惚れた女が身体張ってんのに逃げるなんてありえねえ。2本の炎の竜巻。出番だよ。2人でこの壁を壊して。やめろ。お前も一緒に狙われるんだぞ。それでいいよ。今は私を理解してくれる人もいるし全部よりもあなたとはんぶんこがいい。やめろ、嫌だよ。だって私はあなたが大好きだからやめてあげない。もう私を払いのける力も残ってないゴウカに口づけをした。
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