中学二年というのは誰にとっても多感な時期であるらしく、快活で交友関係の広い正季にとってもそれは例外ではない。反抗期も思春期も自分とは縁が無いと思っていたが、家では兄の冗談やら抱擁やらに文句を言いながら部屋に逃げ、教室で交わされる恋愛話やいわゆる「大人の階段」に関する話に心臓をばくばくとさせる毎日である。今朝も登校してすぐ、にやにやと笑みを浮かべる同級生に手招きされた。
「楠木、お前も選べこれ」
指で示された先には一枚の紙。びっしりと文字が書かれているかと思えば、それはこのクラスの女子の名前だった。名前の横には正の字が書かれていたり、書かれていなかったり。彼女にしたいランキングだろうか。タイトルの書かれていない投票に首を傾げていれば、友人のひとりが耳打ちをしてきた。
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