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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【卵】


    本来の慣用句は「料理」じゃなくて特定の一品だけど、字面があまりにも浮いていたので……

    #飯P
    #腐女子向け
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】卵を割らねば 枝葉の向こうに見える空は、傾いた陽で少しずつ色を変じてきていた。
     「ずいぶん静かだったな、今日は」
     並んで歩く師弟を、やわらかい風が追い越していった。夜が近付くと、春先とはいえかすかに冷たさを感じる。昼の名残が徐々に陰りを見せる中、足音が静寂を塗り替えていく。
     悟飯は答えられず、かわりにため息を逃がした。胸の裡にはたくさんの思いが渦巻いているのに、どれも言葉にはなってくれない。抱えている気持を伝えたいが、どのような表現ならば的確なのか、正しく伝わるのか、分からなかった。
     「考え事か?」
     穏やかな問いかけが、逆に悟飯をかき乱す。優しげな声音が今は、心を波立てるものとなっていた。
     「……はい、ちょっと」
     言葉を詰まらせるこの気持を、少し前までは、尊敬と畏怖であると感じていた。ところが気付けばそれは苦しく、時に手に負えないほどの恋情にすり変わっていた。はっきりとそれを認識した途端、ただ側にいることすら辛くなった。
     かといって、十年近くも師弟としての距離感を保ってきたのだ。今さら別の関係を持ちたいと切り出して、今の関係が壊れてしまうことは恐ろしい。少年の他愛ない悩みではあったが、まだ年若い悟飯には重大な問題だった。
     「ピッコロさんはいつも、物事に挑むのに後込んだりしませんよね……」
    「なんの話だ?」
     敵の子である自分を鍛えたこともそうだろう。将来驚異になるやもとは、思わなかったのだろうか。はじめて会う同族との同化や、先代神との融合などは尚更だ。何かが大きく変わってしまうことが、恐ろしくなかったのだろうか。
     「僕は挑むことが、変えることが怖いから……ピッコロさんは、怖がらずに同化や融合だってやり遂げて、すごいなって」
     俯いた悟飯の言葉に、暫くのあいだ返事はなかった。横顔に視線を感じたが、悟飯は顔を上げることができない。草を踏み分ける二人分の足音が、冬とは違う湿り気を帯びていた。
     「……デンデが読んでいた地球の本にな」
     木漏れ日はずいぶん薄れている。暗くなり始めた照葉樹林に、一輪草がひときわ白く咲いていた。
     「卵を割らねば料理は作れない、とあった」
     悟飯は思わず顔を上げる。まなざしがぶつかると、ピッコロはあくまで落ち着いた調子で続けた。
     「お前はよく勉強しているから、この慣用句も知っているだろう? おれはただ、恐ろしくとも割らねばならなかっただけのことだ」
    「ピッコロさんも……怖かったの?」
    「同化も、融合も、恐怖心はあった」
     あっさりと言ってのけ、ピッコロは目線を前方へ戻した。木立と草原の境目から、斜めに陽が射し込んできている。
     「……怖くても、変えてきたんですね」
    「だから今がある。お前が何を恐れているのかは分からんが……本当に変えたいと、変えることが必要だと感じたら、いずれ割るしかなくなる」
     静かに頷いて、悟飯は言葉の意味を反芻する。自分はいったい、何を恐れているのだろうか。拒絶されて傷つくことか? これまでの関係が変わってしまうことか? けれどその恐れと、ずっとこのままの距離を取り続けること、本当に辛いのはどちらなのか……。
     悟飯はそっと手を伸ばし、ピッコロの指先をとらえた。出会った頃は、まだ自分の手が小さすぎて、指を握るのが精一杯だったことを思い出す。けれど今は、手のひらをしっかりと重ねて、握りこむこともできる。
     振り払われるかもしれないと思ったが、ピッコロは掴まれた手をちらと見遣っただけだった。意を決した悟飯が静かに指先を絡めると、されるがままになっていた手は、握り返すようにほんの少し指を曲げた。
     木立が途切れると、草原の端に沈んでいく夕陽が見えた。割られた卵のように濃い山吹色の、重たげな夕陽だった。
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    summeralley

    DONE客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い

    毎度言ってますが🍚がぴ意識しすぎて💅との距離が気になるだけで、プロの💅は客の前で匂わせはしません。と言い訳して匂わせを書いてます、CPものなので🫶

    ナメ店員いてP受けの匂いを感じる店があるなら通います……週七で……
    【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/05ニコラシカ 『Veil』のカウンターには、ひとつ間を空けてもう一人、客が座っていた。長く通っているらしく、マスターと談笑しながらグラスを傾けている。
     僕は作ってもらったカクテルを飲みながら、言葉少ななピッコロさんにとりとめもない話を聞かせていた。水煙草を共有して以来、ほんの時たま笑顔を見せてくれるのがたまらなく嬉しい。とはいえ先日の路地裏で見た荒んだ雰囲気など、まだ分からないことの方が多かった。
     「何か飲まれますか」
     残り少なくなっている僕のグラスを見て、ピッコロさんが尋ねてくれる。
     「どうしようかな……」
     まだ酔いは回っていないが、酒に詳しくないので何が飲みたいというものもない。いつも「甘いもの」「さっぱりしたもの」というような注文をしている。思案していると、隣の客がマスターへ、ニコラシカを、と言うのが聞こえた。かしこまりました、と答えたマスターが半身だけ振り返り、棚から小さな瓶を取り出す。
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    anna_usagisan

    DONE誘拐事件がなく勉強漬けの日々で医者となったあすくのお話。
    受けに対してちょっと夢見がちな印象を持つ攻めと、運命の再会シチュが好きで、あまりにも見たくて衝動で書きました。
    文章変なところあるかと思いますが、ご容赦ください。
    子あすくは大体小学5、6年生くらいのイメージです!
    完全ifのお話なので宿のお話も終焉陸のお話もないです。
    ifあす日 緑青あすくは幼い頃、妖精さんに恋をした。
     たった二日間だけ遊んでくれた、同い年くらいの男の子。
     太陽のような笑顔、ちょっと音量がデカいけど弾けるような明るい声、たくさんの人に好かれそうな優しい性格。
     出会ったのは、あすくが公園で一人で遊んでいた時だった。
     勉強ばかりで友達がいなかったから、まさか声を掛けられるとは思わなくて、その子が誘ってくれた時はすごく驚いた。
     でも流れるように一緒に遊んでいると時間を忘れてしまうほど楽しくて、あすくはすぐにその子のことが気に入ってしまった。
     帰る時はまたな!と言ってくれたから、次も遊んで、いつか友達になってくれるのではないか、あすくはそう期待していた。

     なのに、男の子はあすくと二日遊んだだけで忽然と姿を消してしまった。
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