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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【珈琲・お菓子】

    お題混合もできず、コーヒーだけで……

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】寒空と缶コーヒー 冬が深まり、夕暮れの街は凍えそうに冷えきっていた。空はどんよりと曇り、ずいぶん近く垂れ込めて見える。
     それでも、ピッコロさんと並んで歩く街は、いつもよりずっと明るく感じられた。家具を買い替えたいから、持ち帰るのを手伝ってほしいと誘い出したのだ。勿論そんなことは建前で、ただ一緒にカーペットやソファなど見て、同棲をはじめる気分を味わいたかっただけなのだが。
     「本当に、持ち帰らなくてよかったのか?」
    「うん、宅配で大丈夫です。急がないので」
     だったら何故呼んだ、と言いたそうなピッコロさんの言葉を遮るように、僕は唯一持ち帰ることにしたカーテンを大仰に抱え直した。
     北風が走り抜けるたび、頬や手の甲が冷やされる。もしかすると、夜は雪になるのかもしれない。ピッコロさんも、デンデに無理やり着せられたコートのポケットへ両手を突っ込んでいる。地球人より寒さには強いと言っていたが、冷たさを感じないわけではないだろう。
     すっかり日が沈み、ぽつぽつと街灯がともりはじめる。店の庇や看板も電飾に照らされ、街は少しずつ、夜の気配に染まっていく。行き交う人々は誰も他人を気にしてはおらず、それぞれの家を真っ直ぐに目指していた。
     ふと自動販売機が目に入り、僕は足を止めた。
     「ちょっと待って、コーヒー買います」
     ホットコーヒーを一缶……こういう寒い日は、少し甘いコーヒーが欲しくなる。取り出し口から持ち上げると、熱いほどに温かい。開ける前に少し考えて、もう一缶買った。
     「はい、ピッコロさんの」
     ピッコロさんは少し驚いた顔をして、静かに首を振った。
     「悟飯……忘れたのか? おれは水以外のものは」
    「うん、でもポケットに入れとくとあったかいですよ」
     ピッコロさんはしばらく缶を見つめ、躊躇いながらも受け取ってくれた。僕が自分のコーヒーを開けている間に、右のポケットに缶を押し込む。再び歩き始めてしばらく経ち、ピッコロさんは僕の方を向いて微笑んでくれた。
     「……悪くないな、確かに」
     そうでしょう、と胸を張って、コーヒーの最後の一口を飲み干す。寒空の下で飲む缶コーヒーは、あたたかく、甘く、喉を通って胸の底まで落ちていって、身体の芯に火を灯すようだ。
     折よく設置されていたごみ箱に空き缶を捨てると、缶と缶のぶつかる音が高く響いた。
     ピッコロさんは、相変わらず両手をポケットに突っ込んで歩いている。右手はコーヒーの缶を弄んでいるのか、ほんの少し肘が動くのが身体越しに見える。
     角を曲がり、住宅街の細い道へ入る。薄暗くなったのを潮に、僕は身体を一歩分寄せて、ピッコロさんの左のポケットへ手を突っ込んだ。驚いた面差しと目が合う。
     「こっちは、僕があっためます」
     ポケットの中で手を繋ぎ、指を絡めた。ポケットに入っていた割には、冷えてしまっている。それでも細い指は滑らかで、僕の手をポケットから追い出すこともしなかった。
     看板を照らす電飾や、営業中の店の眩しい光がなくなった代わりに、家々の窓からかすかに漏れる明かりが視界に優しくちらつく。あの一つ一つの向こうに、暮らしがある。今日は同棲の「気分」を味わいたくて付き合ってもらったが、いつかは……。
     段々と、握った手があたたまってくるのが分かった。かたく緊張していた手のひらが、次第にやわらかくなる。互いの体温を補い合うと、冬の冷たさが遠退いていくようだ。
     もう買い物は終わったのに、いつものように「ならばまた」と帰ってしまわないのは、僕の部屋の前までは、付き合ってくれるということだろう。どうせならたまには上がって……いや、泊まって行って欲しいところだが……。
     「あの、もしよければですけど」
    「なんだ」
    「カーテンつけるの、手伝ってもらえませんか? それで少し、ゆっくりしてってほしいな」
     何気ない風に言いながらも、握った手についつい力が入ってしまった。下心がありますと告白しているようで、何も言われていないのに、僕はやけに焦ってしまう。
     ところが、ピッコロさんは無下に断ることも、僕の妙な焦燥を指摘することもしなかった。
     「……そうだな」
     神殿を気にしたのか、ピッコロさんは一度だけ空を見上げる。それから僕と目を合わせて、悪戯っぽく笑った。
     「この缶も悪くないが……右手も、お前があたためてくれるなら、手伝う」
     僕はほんの一瞬だけ呆気にとられ、しかしすぐに気を取り直した。
     「そんな、そんなの………勿論です!」
     必要以上に力強く答えると、ピッコロさんが、同じほどの力で手を握り返してくれる。絡んだ指の感触は、あたたかく、甘やかで、胸の底まで染みていって、身体の芯に火を灯す。寒空の下で飲む、缶コーヒーのようだった。
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    Replies from the creator

    summeralley

    DONE急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。
    ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
     元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
     ――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
     自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
     その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
     石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
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    summeralley

    DONE10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。
    【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
    「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
     ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
     ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
     石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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