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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    夢魔のネイル
    ナメたち存在が浮世離れしてて美しいのでファンタジーが似合う
    この設定でもっと書きたいけど、飯Pといい書きたいものが渋滞してる~🥺

    #ネイP
    nayP
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【ネイP】奪わない夢魔 目を覚ましたこの寝台が、夢の中の寝室にあることを、ピッコロは知っていた。現実での「目覚め」は許されていない。目を覚ませば、ピッコロの中に封じられているかつての大魔王……世界にとっての災厄も、目覚めてしまう。
     「目が覚めたか?」
     窓のそばで、夢魔が振り返る。
     「覚めた……寝ているが」
     短く笑い、ネイルは窓を大きく開ける。寝台まで静かに歩いてきて、ピッコロの傍らに腰を下ろした。夢魔の腕が迷いなく伸び、ピッコロを抱き寄せる。素直に胸へ額を預けると、淡い体温と共に、人を惑わすような、甘ったるい香りが漂った。
     「……別の夢へ、行っていたのか?」
    少しだけ、と呟きが落ちる。後ろめたいような、何かを隠したいような響きだ。 
     「大丈夫、お前からは奪わない」
     耳元で囁く声は、ひどく優しい。
     ネイルが初めてこの夢へ訪れてから、どれほどの時間が経つのだろう。その頃はこの夢も、もっと殺風景だった。灰色の大地と灰色の空、眠り続けて老いて死ぬことを運命づけられたピッコロは、もう何年も、ただその中に横たわっていた。感情は麻痺し、自分しかいないはずの夢で、突然入り込んだ誰かに覗き込まれても、何も感じなかった。
     「……つまらない夢だ。喰らう価値もない」
     ところが、そう吐き捨てておいて、ネイルはたびたびピッコロの夢へやって来た。ほんの短い時間、傍らに腰掛けて、覗き込んだり、一方的に話しかけては去って行く。
     「何故こうも無気力なんだ?」
     「これでは、誘惑すらできないな」
     「ずっと眠り続けているとは……これで喰らう欲があれば、どれほどよかったか」
     夢魔という存在については、ピッコロも聞かされたことがあった。夢を渡り歩き、欲を喰らい糧とする者……欲と一緒に、命をも喰われると。しかし、夢に閉じ込められているピッコロにとっては、どうでもいいことだ。
     ある時、ネイルはほんの気紛れで、薄暗い空気の中に無数の蛍を浮かべて見せた。
     「誘惑を目的とせず、夢を操作するのは初めてだな……おい、見えるか?」
     ピッコロは答えなかったが、眠らされて以来ついぞ見なかった美しい光景に、静かに心動かされていた。
     そしてその次にネイルが来た時に、とうとう言葉が出た。あれをまた見せてくれと。
     ネイルは驚き、蛍だけでなく、星空も、蝶の群も、灯籠の道も出してみせた。空を明るく変え、大地に草を繁らせ、ささやかに暮らせる家も作り出した。そして気付いたら、すっかりこの夢へ居着いていたのだ。
     「……お前からは、欲を喰らわない。こうしているだけで、十分だ」
     唇が額に触れる。続けて頬に、そして口元に……浅く、何度も重ねられる。甘やかすように、宥めるように。
     「夢魔が、それで足りるのか」
     思わず問いかけたピッコロに、ネイルは静かに微笑む。夢魔らしからぬ、穏やかな笑みだった。
     「交われば、お前の命を削る……それはしたくない」
    「……」
    「だから、触れるだけでいい。腕に抱いて、唇を重ねて……それ以上は望まない」
     ネイルの手がピッコロの背を撫で、肩を包む。欲望を喰らうはずの存在が、ただ与えることだけで満たされようとしている。
     開け放った窓から、湿った夜気が流れ込んで来る。鈴を転がすような虫の鳴き声と、叢立つ植物の青い匂い。全て、ネイルが訪れる前は存在しなかったものだ。
     冷たい指先が、ピッコロの頬をなぞる。熱を帯びた手が喉元に触れ、肩に滑り、胸の上を辿った。ピッコロの息が詰まる。心臓が強く打つ。
     夢魔なら、次はどうするか……ピッコロとて知っている。深く侵し、快楽で絡め取り、欲を啜る。されどネイルは、そこで手を引いた。
     「……これ以上は、しない」
    「したいと、思わないのか」
     ピッコロの問いに、ネイルはただ目を伏せた。
    「思うに決まっている。お前に触れて、何もかも奪って、夢ごと溺れさせたい……しかし」
     甘やかな抱擁と共に、唇が軽く掠める。頬に、瞼に、唇に。確かに熱を誘うのに、決して深くは踏み込んで来ない。
     「命を削るくらいなら……抱きしめているだけでいい」
     抱擁が切実になる。腕の中に閉じ込められて、ピッコロは目を閉じた。
     それだけでは、夢魔の欲求は満たされないことを、ネイル自身が一番知っているはずだ。夢魔である限り、これでは飢えを引き延ばすだけだと。
     だから、時にネイルは別の夢へと出掛けて行く。糧を得て、生き延びるために。ピッコロも、ネイルも、そのことについて深く語りはしない。互いにどんな思いでいるかが、分かるからこそ。
     「目が覚めたなら、海でも見に行くか?」
    「こんな夜にか?」
    「昼にすればいい。夢なのだから」
     ネイルはピッコロの手を引いて立ち上がる。窓の外が、たちまち明るい空に変わる。
     先ほど感じた甘い香りは、もうなかった。代わりに、よく知った手の強さだけが、ピッコロの信じられる現実だった。
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