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    888_ysm

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    嘉彧/小説/現パロ/微微微エロ

    嘉彧現パロ小説
    夜遊び郭嘉の帰る場所
    ※郭嘉(と攸&賈)の喫煙表現あり

    am4:16 極々微かなカードキーの開錠音。浅く微睡の中を揺蕩っていた意識がゆるりと浮上した。続いて玄関の扉が音をたてぬ様、慎重に開けられる。空気でわかる。恋人で同居人である郭嘉の帰宅だ。
    (――今、何時でしょうか)
     枕もとのサイドボードに置いている時計をぼんやりと確認すると、AM4時過ぎ。ほぼ朝帰りと言ってもいい時刻だが、まだ夜の帳は重く降りたままで朝の気配は感じられない。愛する人の無事の帰宅に安堵しながら、それでも起きて出迎えるまでもなく心地よい布団の温もりに寄り添う。静かに扉を開ける音と聞き慣れた足音が近づいてきた。
    「荀彧殿」
     ただいま、溜息の様な空気を多分に含んだ声と共に、先程までの静かな挙動は何処へやら、くるまっている布団ごと無遠慮に抱きしめられる。華奢な金の髪が廊下から届くにぶい常夜灯の灯にチカリと反射するのがやけに眩しく目に入った。喧噪の匂いのこびりついた彼はまだ上着すら脱いでいないようで、革のジャンパーの分厚く冷たいごわついた感触を感じる。
    「ぉかえり、なさい」
     寝ていた為に掠れた声で返す。郭嘉が身じろぎする度に知らないようで馴染み深くもある街の香りと彼の甘い香りがする。煤けたような匂いは煙草だろうか。だとしたら知らない銘柄だった。
     同居を開始する前に、実は煙草は苦手であるので吸う場所はベランダにして欲しいとお願いしたのだが、その瞬間から煙草自体をすっぱり辞めてくれた。『何となく吸っていただけだからね、まだ中毒というほどでもないし。言ってくれてありがとう』気づかずにごめんねと逆に感謝と謝罪をされたその日からしばらく経つ。たしかにヘビースモーカーではなかったし、気遣いも上手い故にあまり気にすることもなく付き合っていたのだが、そんなに簡単にニコチンは抜けるものなのだろうかと禁煙外来を謳うクリニックの看板を見るたびに、あの日即座にゴミ箱に投げ入れられた煙草のラベルを思い浮かべる。
    「……吸いました……?」
     何をと言わず問うと、んん〜と間の抜けた声。
    「吸ってはいないよ。でも、シガーバー……連れていってもらったから……ね」
      賈詡殿と荀攸殿が行きたいって、と許しを乞うような甘えた声を出して、抱きしめてくる力を強める。煙草とは臭いが違うと思ったら葉巻だそうだ。副流煙ならばまあ仕方がない。実はこっそり吸ったのかもしれないがそれを問うたところで意味もないし、葉巻を楽しむための場所に行ったのならしっかり堪能するのが礼儀だろう。それより従子の荀攸は禁煙すると言っていた気がするのだが諦めたのだろうか。煙草と葉巻は別枠なのだろうか。ニコチンを摂取するという面においては同じく禁じた方が良いのではと思うのだが。……また明日聞いてみよう。
     できれば早くシャワーを浴びて着替えてきて欲しいのだが、このまま眠ってしまいそうな雰囲気の郭嘉はぐずるように小さく唸った。
    「あなた、先に帰って……寂しかったな」
     そう、実は時刻が変わる頃までは一緒に飲んでいた。2件目のワインバーを出たところで一人帰路に着いたのは、自分なりの郭嘉への気遣いでもある。遊び盛りのお年頃、口煩い歳上の恋人が四六時中側にいれば何かと不都合が生じるだろう。此度のシガーバーだって遠慮したはずだ。彼には自由でいてほしかったし、友人との時間も大切にしてほしかった。
     しかし寂しかったと言う割にはしっかり遊んできたのは時刻を見れば明らかである。あの後シガーバーを含めもう2、3件くらいは行ったのだろう。元々夜遊び好きな質であるのは重々承知しているし、それを辞めさせるつもりもない。繁華街の賑やかなネオンが彼にはよく似合うし、そんな奔放な郭嘉が帰ってくるのがこの場所であるのならば嬉しい。
     何となしに郭嘉の整髪料のべたつきも薄れた髪を撫でる。子供を寝かしつけるようにゆっくりと手櫛を通す。香水、葉巻の独特な匂い、アルコール、料理の油、人々の気配、様々な匂いの中に混ざり合い調和する郭嘉本人の匂いは、まるで彼自身の柔軟な生き方のようだ。
    「……ねえ、えっちしよう」
     寝つき始めたと思った郭嘉だったがまだ元気だったらしい。直接的な誘いにさっと目が冴えた。
    「何時だと思っているんです」
    「まだ暗いよ」
     ぬるりと首筋に舌を這わされる。乱雑に布団を捲り上げられ、郭嘉の着ている革の上着のギュッという音が身体に直接響いた。パジャマの下に侵入してくる手は夜風に冷え、温めてあげたい衝動に駆られる。
    「こら、郭嘉殿……郭嘉殿?」
     ちゅっちゅっと首元で軽快に響いていたリップ音が途絶え、肌に侵入した手は力を無くしシーツに落ちた。どうやら寝落ちしてしまったようだ。安らかな寝息のギャップに鼻から苦笑の息が漏れた。
    「もう、手の掛かる」
     肌蹴られて布団の温もりを奪われた身体は追い打ちをかけるように不埒な手にまさぐられ、しっかり目覚めてしまった。上体を起こし郭嘉の上着をひっぺがす。ベルトを外し、靴下を脱がし、楽な格好にさせる。自分より少し背丈が低いといっても立派な成人男性だし筋力は荀彧よりも多い。帰宅する郭嘉のためにきっちり空けていたクイーンベッドの右隣へ動かすのは諦め、荀彧の体温で温もったその場所を譲る。荀彧自身はいつも郭嘉が眠る、今は冷めた右側へ移動した。身体に灯された微かな欲が冷えたシーツに宥められる。
     知らない匂いを纏って眠る郭嘉をきちんと布団に収納し、腕を伸ばし抱き寄せる。自分の匂いを、二人の部屋の空気を上書きするように。葉巻は煙草と違って化学的なツンと鼻につく臭いはしないようで、独特だし煙たいがそこまでの嫌悪も覚えない。今は甘えるように頭を擦り付けてくる郭嘉だが、きっと葉巻を燻らせ酒を舐める姿はそれはそれは色めいて魅惑的なのだろう。それだけを拝みに今度連れて行って欲しい気もする。吸っていないと弁解した郭嘉をあまり信じていない自分が少し可笑しい。

     とりとめもなく思想する脳が霞んできた。やはり隣にこの人がいると安心して寝付けるようだ。聞き慣れた呼吸は安定した間隔を刻み、まるで子守唄のように眠りへと誘う。
    (明日はシーツを洗いましょう)
     まだ濃厚な夜の気配の中、朝早いのか夜遅いのか定かではないバイクの派手に鳴り響く排気音は、すでに耳には届いていなかった。
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