JockのOOゲットーだぜ！「何···？」
「彼女ができたって。」
 ベルトルトは自分の気持ちも知らずにご飯を食べるライナーを眺めた。 誰かは口に入っていたご飯が鼻に入っても分からないほどなのに、目の前の男は何事もないように振る舞った。 ベルトルトは彼のメッセンジャーとして自分がしなければならないことを知っていた。 それでもできなかった。 ベルトルトは置いていたスプーンを持ち上げ，ご飯を口の中に詰め込んだ。 さもなければ、今にも泣き出して彼にしがみつきそうだった。 小さな女の子-ライナーが好きな-でもない192cmの巨体の男性である自分が、自分と同じように巨体を持った彼にしがみつく姿は非常に醜い光景なので、ベルトルトは喉を塞ぐように手を動かした。
「おい、ベルトルト。 すごくお腹が空いてたのか？」
ベルトルは首を横に振った。 何を言いようか？ お腹がすいているのではなく、学校のみんながいる学生食堂で、あなたにすがりついたまま、私があの子より先に君のことが好きだったと叫びたいことを我慢することだとは言えなかった。 口の中をいっぱいに満たした食べ物を感情を込めてしっかり噛んで飲み込んだベルトルトは、先ほどとは違う理由で口を開いた。
「···相手は誰？ クリスタ？」
ライナーの口から出る相手が誰であれ、ベルトルトはそれより長い時間、もっと深い心でライナーを好きだったと確信することができた。 それがクリスタならなおさら。-向こうのテーブルに座ったユミルは, 目が合うまでこっちを見ていたような気がした-
「クリスタではない。 ···君は知る必要はない。」
話し終えたライナーは席を立った。 ベルトルトはライナーの後を追って急いで立ち上がったが、今の会話を聞いた群れに捕まって席に座らせた。 本人に聞くのは怖がるくせにゴシップ好きな奴らだった。
「あの、ベルトルト！ライナーに恋人ができたんだって？」
「誰だって？クリスタは違うって言ってたけど···似てるタイプじゃない？」
「……そうだな？ 私にも言ってくれなくて分からないね。」
「そんなこと言わないで、ライナーがあなたに言わないわけないだろ。」
ベルトルトはますます彼に近づいてくる男を避けて身を引いた。 そっと横に移動していたその時、よく鍛えられたような体にベルトルトの肩がぶつかった。
「あ、ごめん。 ···ライナー？」
ベルトルトの肩がライナーにつかまった。
「こいつをいじめるのはやめて私に聞いてみたらどう？」
起きて、ベルトルト。 こいつが食べたものはお前たちが片付けるようにしろ。 当事者には何も言えない情けない奴らを後にして自分のメッセンジャーを起こしたライナーは、彼の手首を握ったまま食堂を離れた。
ライナー。なんで？ 行ったんじゃなかったの？ ···お前が来ないから。


昼食後，ベルトルトは非常に悪い決心をした。 サンタを信じる子供だったら、クリスマスの朝、居間に立てられたツリーの下が空っぽになるような決心だった。-サンタを信じる子がそんなはずないけど-
「初めての恋愛相手になれないなら、ライナーの同情くらいは持ってもいいんじゃないか？'
ベルトルトは幼い頃からライナーと一緒だった。 つまり、彼の一挙手一投足を知ることができたということだ。 ベルトルトはライナーが好きな好みを知り、誰が彼を好きなのか、告白したのか、付き合ったのかを知っていた。 ライナーがベルトルトに隠すことなく全て話したとすれば、真実だけを話したとすればライナーは恋愛経験「無」にセックス経験「無」だ。 そしてそれはベルトルトも同じだった。 ベルトルトにはライナーしかなかったから当然のことだったけど。 ベルトルトはライナーに初めて会ったその瞬間からずっとライナーだけのためだった。 現在在学中の学校で彼のメッセンジャーとして公然と広まる前まで、ベルトルトはいつもライナーだけのメッセンジャーだった。 それはこれからも同じだった。 ベルトルトは携帯電話を取り出した。


ライナー

今日うちに来ない？

君が好きなもので夕食を作っておくよ

好き


準備は終わった。 ベルトルトはポケットの中の小さな瓶を触った。


「来たよ、ライナー？」
「ああ」
呼び鈴を押す前にドアが開いた。 ライナーは伸ばした手を奪った。
「何を準備したからそんなに浮かれているの？」
「今回は料理がうまくいった。 ライナーも好きだと思う。」
「自信あるんだろう？」
ベルトルトは玄関に入り，靴を脱ぐライナーの後ろ姿を眺めた。 ごめん、ライナー。

夕食は素晴らしかった。 全てが招待客に合わせた完璧な姿だったので、ライナーは自分だけのための夕食を楽しんだ。 ベルトルトは絶えずライナーの取り皿に食べ物を運んだ。 これは君の好きな部位を使ったステーキだよ。 ソースは果物を入れて煮詰めた。 どう？前にやったのより柔らかくない？ あ、これも飲んで。 疲労にいいらしいよ。 甘いでしょ？ 試合のせいでしばらくこういうのは口にできなかったじゃん。
ライナーは口の中を転がっている柔らかい肉の切れ端をかんだ。 甘くて刺激的な炭酸を飲んだら気持ちが良かった。 朦朧とした気分で顔を上げると見えた微笑みは、口の中のものよりもっと柔らかくて甘かった。
「ところで、今度は何？ 優勝は先週末に祝ってくれたじゃない。 これは彼女ができたことを祝ってくれるのかな？"
「……そうだな」
ベルトルトの返事に満足したように笑ったライナーは、いつの間にか一杯になったグラスを一気に空けた。 口の中と食道がひりひりした。 一気に上がった炭酸にライナーは口をふさいでまた笑った。 今度はベルトルトも笑顔を見せた。 
ライナーの顔は赤く染まっていた。 ベルトルトは席を立った。 高揚した気持ちは容易には収まらないようだった。 ライナー、ライナー。 赤くなった頬を手で包んだ。 試合後の彼と同じような感じだった。 ベルトルトは私に握られたライナーの鼻にキスしようとした。 本当に。ライナーがベルトルトの襟を引っ張らなかったらね。 重なった唇の間に柔らかい舌が行き交った。 歯並び、口蓋、舌、頬すべてを味わった舌が抜け、落ちた唇の間に唾液が垂れた。 電灯に輝く姿はまるで二人をつなぐ銀色の糸のようだった。
「薬はどのくらい入れたの？」
ベルトルトの目が大きく開いた。 どうして分かったのかという気配がありありと見えた。 ライナーは昔も今もベルトルトは分かりやすいやつだと思っていた。
「私があなたに関して知らないことができるようにするはずがないじゃないか。」
ライナーは抱きやすい位置にある腰に腕を巻いた。 シャツを押し上げると、現われたへその下に、折って音を立てながらキスすると、腕の中の腰が細かく震えた。
「いつも思っていた。 どこまで入るか。」
「何を···？」
「知ってるでしょ、ベルトルト」
顔を上げるとゆがんだ顔のベルトルトが見えた。 今にも泣き出しそうな顔。 そう、君はそんな表情も愛らしかった。 一度も君の泣き声にイライラしたことはなかった。
「彼女ができたというのは嘘だったの、ベルトルト」
赤くなった目頭を熱くして、顔が赤くなった。 ユミルが教えてくれた方法だ。 あ、ちなみにクリスタはユミルと付き合ってる。
「……だました。」
「だまされたのか」
「うそをついた。」
「うそをついた。」
「でもなんで···」
「こうしたら君がやきもきするって。」
君が使った薬も私があらかじめ準備しておいたものだ。 そんなに簡単に手に入るはずがないじゃない。
「だからベルトルト···」
ぐにゃぐにゃしながらも硬い何かがベルトルトの足をちくちく刺してきた。
「計画したことは最後までやらないと。 楽しみにしているとベルトルト。」
ベルトルトは自分の顔がライナーのように、またはライナーよりも赤くなったかもしれないと思った。