セファイドの僕たち「学生証の提示をお願いします」
歌が終わった先に死の待つステージに立つことよりも予想していなかった展開に、まるで他人事のように驚いている。
「学生証の提示をお願いします」
数秒遅れて隣のカウンターでなされる全くおなじやりとりだって、私にとっては生死を決める投票よりも滑稽だった。
六限目の体育でミジが足を挫いた瞬間も、放課後病院に行くと聞いたときも、不安でいっぱいだった胸に、一縷の安堵が差したのは、「ミジと映画」というカレンダーからの通知が届いたときだった。今日の放課後は、ミジが観たがっていた映画に行く予定になっていた。なぜか男子二人も一緒に。
どういう流れか知らないけれど、ミジとイヴァンがダブルデートと銘打って計画を立て、それぞれの恋人である私とティルが巻き込まれることになった。もし二人きりで映画に行ったとあとから聞かされたら、きっとイヴァンのことを本気で憎んでしまっていただろうから、巻き込んでくれていいのだけれど。
10012