「ん、……」
目を覚ませば見慣れない天井が先ず目に入る。
覚醒したばかりの頭は直ぐに回らずここは何処だっただろうかとぼんやり思案する。
隣の少し乱れたシーツの上に手を置けば、先程までそこに誰かが居たであろう事を伝えるように僅かな温もりが残っている。
そうだ、昨夜は…。
シーツの皺をなぞりながらようやくこの場所の事を思い出す。
此処はヒューゴの家で、今自分はヒューゴのベッドで寝ていること。
自分のベッドよりも大きく肌触りの良い滑らかなシルクのシーツに包まれているのはかなり心地が良く、此処から抜け出したくないと体が起きる事を拒めば、隣に置かれた同じシルクの素材の枕を引き寄せてぎゅうっと抱き締め顔を埋めるとほのかに甘くも静かな夜を思わせるような上品な香りが鼻腔を擽る。
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