Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    高間晴

    @hal483

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 395

    高間晴

    ☆quiet follow

    ぼんど800字。チェズモク。チェズレイの左目のメイクの下についてバレというほどではないネタバレを含みます。

    ##BOND

    ■インクルージョン


     カーテンから射し込む朝の光を感じてモクマは、ベッドの上でうっすら目を開ける。眼前には規則正しい寝息を立てて眠っているチェズレイの顔。目覚めてすぐ近くにこの男の気配があるのにも慣れたもんだな、とモクマはチェズレイのプラチナブロンドを指で梳いた。その感覚に身じろぎしてチェズレイがまぶたを震わせて静かに目を開く。
    「……おはようございます、モクマさん」
    「おはようさん、チェズレイ」
     二人は挨拶を交わすと小さく微笑む。
     そういった行為をしない場合でも同じベッドで眠るようになったのはいつからだったろう。チェズレイはもはや左目の周りに残る傷跡さえ隠しはしない。モクマは手でそっとその傷跡を撫でた。
    「お前さん、ほんとに美人だな。美人は三日で飽きるって言うけどありゃ嘘だってつくづく思うよ」
    「ありがとうございます」
     しかしモクマの称賛の言葉を素直に受け取れるまでに、チェズレイはチェズレイで悩んだようだった。完璧主義者のこの男が、自分の美貌に傷があるのを許すにはそれなりに時間がかかる。だからこそモクマは初めて出逢った頃のように「傷があるからこそ素敵だ」と言って聞かせたのだった。
     チェズレイは身を起こして身支度を始める。まずは乱れてしまった髪をどうにかしようと櫛を探してベッドサイドに手を伸ばす。
    「チェズレイ」
    「わかってますよ、ほら」
     チェズレイは手を伸ばしてきたモクマに櫛を渡す。これも同衾するようになってからだ。チェズレイの長い髪を手触りが良くて綺麗だから、と触ってくるモクマに櫛を渡したら丁寧に梳いてくれた。だから朝にチェズレイの髪を整えるのはモクマの役割になっていた。
     ベッドの上でモクマに背を向けて座り、髪が櫛の歯を通り抜けていくのを感じる。手入れが行き届いているから、途中で引っかかることもない。モクマは愛おしい想いでいっぱいだった。朝のたまご色の光を浴びて、不思議なプラチナブロンドは緑に金にと色を変える。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    高間晴

    DONEチェズモクワンライ「花粉症/潜入」。■今宵は一献


     ヘリの窓からネオン色のまばゆい夜景を見下ろしてモクマが言う。
    「いや~、絶景だねぇ」
     チェズレイとモクマは敵組織のアジトを無事発見し、今宵、二十階建てのビルの高層部に潜入することになった。
    「おや、遊覧飛行をお望みですか?」
     チェズレイの言葉にモクマは苦笑する。
    「そういうわけじゃないけども」
     夜闇に紛れてチェズレイの部下が操縦するヘリに乗り込み、二人は上空から最上階を目指していた。
     二人が無事に屋上へ降りたのを確認してから、ヘリを操縦している部下は二人に向けて力強く親指を立ててみせる。ご武運を――。無言のうちにその意味が伝わってくる。そうしてヘリはバラバラとローター音を鳴らしながら速やかにその場を離れていった。中の通路は薄暗く、窓から入る月明かりだけが頼りだった。
     と、通路を足音も立てずに進んでいたらチェズレイが口元を押さえて本当に小さな小さなくしゃみをもらす。モクマは視線だけで大丈夫かと問うたが、チェズレイは軽く頭を下げるだけですみませんと言ったようだった。
     チェズレイはこの国に来てから花粉症に悩まされていた。幸いいまの時代は薬で症状が抑えられるとは 2238