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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    「文体の舵をとれ」より練習。ロナドラ。

    ##94

    たったの九十八日問二:構成上の反復
     語りを短く(七〇〇~二〇〇〇文字)執筆するが、そこではまず何か発言や行為があってから、そのあとそのエコーや繰り返しとして何らかの発言や行為を(おおむね別の文脈なり別の人なり別の規模で)出すこと。

     ロナルドくんが原稿の執筆途中、事務所の机でうたた寝していた。コーヒーを淹れてきた私は、起こすのも何だなと思ってマグカップを机に置くと、静かにその寝顔を見つめた。ふと目に入るのは閉ざされた目蓋を縁取る銀色のまつげ。たくさんあるものを数えずにはいられないという吸血鬼によくある特性を私も持っていた。なので、机に肘をついて寝顔をじっと見つめながらまつげを数えた。
     何分経過しただろうか。時を数えるのも忘れて私はロナルドくんのまつげを数えきった。マグカップのコーヒーはすっかり湯気も消えており、彼のまつげは両目合わせて六百二十一本だったことが分かった。そういえばこのコーヒーを淹れるときもうっかり豆をこぼしてしまって、床に散らばったコーヒー豆を数える羽目になったのだ。あれは二十六粒だった。こないだ風呂掃除をしたときもタイルの数を数えるのに夢中になってしまい、たかが掃除に一時間もかかってしまったのである。二百十五枚だった。
     そういえばロナルドくんと過ごした日数はいかほどになるか数えてみようと思いついてしまう。思いついたら即行動の私は、事務所の壁に貼ってあるカレンダーをめくりながら、数えた。それが驚くほど短い――たったの九十八日だったので、もう十年は彼と一緒にいたような気がする私はこの先どうなってしまうのだろうと頭を巡らす。そこで思わず笑いが漏れた。私はこの人間と離れる気はないのだと再確認してしまったから。
     ロナルドくんは相変わらず寝言で「フクマさんもう少し待ってください……」とかなんとか呟いている。私はノートPCの画面を覗き込んで画面上の文字を一文字ずつ数えていった。
     ――なあんだ、たったの三千八百三十二文字。この分だと原稿の完成までまだまだ遠い。フクマさんが原稿を取りに来た後には脱稿ハイの彼と私はひと悶着やらかすかもしれない。だが、なぜかいまはそれが楽しみで仕方なかった。
     私はロナルドくんを揺り起こす。閉じられていた青空の瞳が寝ぼけたまま私を捉える。
    「んあ……ドラ公?」
    「ほらほら起きた起きた。その調子だとロナル子ちゃんになってしまうぞ」
     そう言うと彼はざあっと顔を青ざめさせて、真剣な眼差しでノートPCに向き合うのだった。こんな夜はもう何回目になるだろうと数えようとしたが、この先何度もあることだと思うと、阿呆らしくなってしまう。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。年下の彼氏のわがままに付き合ったら反撃された。■月と太陽


    「あなたと、駆け落ちしたい」
     ――なんて突然夜中に年下の恋人が言うので、モクマは黙って笑うと車のキーを手にする。そうして携帯も持たずに二人でセーフハウスを出た。
     助手席にチェズレイを乗せ、運転席へ乗り込むとハンドルを握る。軽快なエンジン音で車は発進し、そのまま郊外の方へ向かっていく。
     なんであんなこと、言い出したんだか。モクマには思い当たる節があった。最近、チェズレイの率いる組織はだいぶ規模を広げてきた。その分、それをまとめる彼の負担も大きくなってきたのだ。
     ちらりと助手席を窺う。彼はぼうっとした様子で、車窓から街灯もまばらな外の風景を眺めていた。
     ま、たまには息抜きも必要だな。
     そんなことを考えながらモクマは無言で運転する。この時間帯ともなれば道には他の車などなく、二人の乗る車はただアスファルトを滑るように走っていく。
    「――着いたよ」
     路側帯に車を停めて声をかけると、チェズレイはやっとモクマの方を見た。エンジンを切ってライトも消してしまうと、そのまま二人、夜のしじまに呑み込まれてしまいそうな気さえする。
     チェズレイが窓から外を見る。黒く広い大海原。時 818