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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。風呂上がり。

    #敦太
    dunta
    ##文スト

    指先、掌、それから 冬は温かい湯船でゆっくりするに限る。
     敦君の後に風呂から上がった私は、タオルで体を拭くと寝間着に着替えた。両肩にタオルを引っ掛けたままで部屋に戻る。其処で布団を敷き始めている敦君が私に気づいて、振り返る。
    「あ、太宰さん。此方来て下さい」
     云われるまま私は敦君の傍まで行く。すると彼は私のタオルを取り、頭に被せてきた。「屈んで下さい」と云われるのでその通りにする。
    「ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃいますよ」
    「うん」
     敦君は私の髪の水分を丁寧に拭っていく。タオル越しにその十の指先の優しさが感じられて、とても心地良い。そっと目蓋を閉じる。まるで子供扱いだけれど、敦君が相手なら厭じゃない。眼の前の彼から、私と同じシャンプーの匂いが漂っているのを、鼻から胸へと静かに吸い込む。心臓の辺りが温かくなっていく。幸せには色々な形があると云うけれど、私は、其れは眼に見えないと思っている。そして此の匂いと、彼が私の髪を乾かす時の指先の動きは、私にとって間違いなく『幸せ』だ。
    「――はい、おしまい」
     敦君の声で私は思考から引き戻される。眼を見開くと、彼の夜明け色した瞳と視線が合う。
     嗚呼、此の色。何度見ても飽きない。どんな宝石よりも、尊い。
     私は御礼にと、敦君の頭を抱き寄せて額にそっとくちづける。「ふふ」と小さな笑いがお互いにこぼれた。
     私は水分を含んだタオルを洗濯籠に放り込むと、敷かれた布団に潜り込んだ。まだひんやりとした布団に続いて敦君が入ってくるので、私は彼に抱き着く。私よりも少し高い体温が愛おしい。彼も私の背に腕を回してきた。「太宰さん」と呼ぶ声は甘く、触れ合わせた唇は柔い。寝間着の裾から忍び込んでくる掌の感触が、また先程とは別の心地良さで私を蕩かしていく。戸惑いながらぎこちなく私に触れてきていたあの頃が懐かしい。
    「何か可笑しいですか?」
    「いや、君もだいぶ慣れたなって」
     夜は更けていく。私たちはそんな当たり前のことにはお構いなしに、互いに溺れていく。
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    高間晴

    MAIKINGチェズモクの話。あとで少し手直ししたらpixivへ放る予定。■ポトフが冷めるまで


     極北の国、ヴィンウェイ。この国の冬は長い。だがチェズレイとモクマのセーフハウス内には暖房がしっかり効いており、寒さを感じることはない。
     キッチンでチェズレイはことことと煮える鍋を見つめていた。視線を上げればソファに座ってタブレットで通話しているモクマの姿が目に入る。おそらく次の仕事で向かう国で、ニンジャジャンのショーに出てくれないか打診しているのだろう。
     コンソメのいい香りが鍋から漂っている。チェズレイは煮えたかどうか、乱切りにした人参を小皿に取って吹き冷ますと口に入れた。それは味付けも火の通り具合も、我ながら完璧な出来栄え。
    「モクマさん、できましたよ」
     声をかければ、モクマは顔を上げて振り返り返事した。
    「あ、できた?
     ――ってわけで、アーロン。チェズレイが昼飯作ってくれたから、詳しい話はまた今度な」
     そう言ってモクマはさっさと通話を打ち切ってしまった。チェズレイがコンロの火を止め、二つの深い皿に出来上がった料理をよそうと、トレイに載せてダイニングへ移動する。モクマもソファから立ち上がってその後に付いていき、椅子を引くとテーブルにつく。その前に 2010

    高間晴

    DONEお題箱より頂いた、「ひたすらモさんを褒めちぎるチェズ」。
    なんか手違いで褒めるというよりは好きなところを挙げていますがご容赦ください。
    ■このあと美味しくいただきました。


     チェズレイは目的のためならかける手間を惜しまない男だ、とモクマは思う。
     ふらりと出かけ、数時間ほどでセーフハウスに帰ってきたチェズレイを玄関で出迎える。その手にはケーキが入っているらしき箱と茶色の紙袋があった。甘いものに目のないモクマは嬉しそうに笑う。
    「チェズレイ。それお土産? ケーキ?」
    「タルトです。苺が旬なのも今のうちですし、買ってきました。一緒に食べましょう」
     そう言いながらキッチンのダイニングテーブルに箱と紙袋を置く。待ちきれずにモクマが箱を開けてみると、たっぷりの真っ赤な苺がクリームの上に乗ったタルトが二切れ入っている。テーブルに手をついて箱を覗き込みながらモクマはお伺いを立てる。
    「あ、おじさんコーヒー淹れよっか? タルト甘いだろうからブラックで――」
    「いえ、クリームを使ったタルトに合わせるなら油分のあるコーヒーより、口の中がさっぱりするストレートの紅茶ですね」
     それを聞いてモクマは首を傾げる。紅茶。コーヒー豆ならあったけど、茶葉なんてなかったはずだ。そこで隣に置かれている紙袋に目が行く。チェズレイはその中からアルミの小 2964