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    Magito_No3

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    Magito_No3

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    これはpixivに投げたロトっ子のやつのどっかに捩じ込もうと思ったけど話がグダリそうだからカットしたやつ
    犬が死にます

    「俺には剣の才能しかなかったから、そうするしかなかっただけだ」

    そう呟くアレンに、僕らはそろって首を横に振った。

    「そんな言い方しないでよ! 剣の才能だってすごいじゃないか、僕を見てごらんよ! こんなヘロヘロの剣筋でさあ!」
    「そうよ! 10歳の時に兵士長に勝ったって聞いてるわ、十分すごいじゃない!」

    どうしたことか、アレンはそれを聞いた途端に俯いて、拳を強く握り締めた。あまり触れられたくない話題だったのだろうか。

    「その噂は曲解して伝わったものだ。兵士長を打ち負かしたのは12の時だ」
    「そ、それ十分凄くない……!? 僕なんか全然」
    「10の時に初めて動物を殺した」

    凄みのあるアレンの言葉に、僕は口を閉ざすしかなくて、マリアもただ黙って、アレンを見ていた。

    「犬の魔物だった。この先、魔物を殺すことになるのだから慣れておくべきだ、と父上や兵士長に諭され、俺はその魔物の首を切った。……実際は、魔障に侵され凶暴になったただの犬で、まだ魔物にはなりきっていなかった」
    「そんな」

    マリアが思わずと言った様子で呟く。

    「その犬は、度々城内に迷い込んでいた野犬だったらしい。本来は人懐っこくて噛んだりもせず、皆に可愛がられていたのだと。だから、兵士たちも殺すことを躊躇して、俺に全部擦りつけたんだ」
    「なんで、そんなこと……」
    「都合が良かったから。兵士長に勝った、なんてのも、兵士長がやらなかったことをしたから言われたに過ぎない。あれ以来、犬は苦手だ。……感触を、思い出す」

    アレンは自分の手を見つめている。
    動物を殺す感覚、というものは、魔物とはまるで違うだろう。魔物は身体が残らないけれど、動物は身体が残る。それが、命懸けで戦う肉食獣や、食い繋ぐために命をいただくならまだしも……。

    「……ごめんなさい、ついて回ったりして。嫌なこと、思い出したんでしょう」
    「別に気にしてない。お陰であの犬がマリアだと気づけたんだからな」

    そう返しても、マリアの顔はやはり浮かない。別に君のこと苦手って言われてるわけじゃないのになぁ。

    「それに、あの感触も、忘れるべきではないと思っている。確かに俺たちが戦うのは魔物だが、それでも、命を奪っているんだ」
    「そうだね。たくさんの命が奪われてきたけど、僕らも命を奪ってること、肝に銘じておかなきゃね」
    「……そうね」
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