「朝だぞー起きろー」
大きなシーツの塊をゆする。
ベッドの半分を占領するそれは僅かにもぞもぞ動き、沈黙した。
「ムルソー」
もう一度、やんわりとゆすってみる。
今日は協会の朝練が無いからか、まだ心地いい夢から出たくないらしい。
ふむ。
とはいえ、だ。
もう日も高いし、そろそろ起こしてやらねば彼のためにもならないだろう。
そう思い、ゆさゆさゆすって目覚めを促す。
と、やっとシーツの繭からとても眠そうなハンサムが起き上がって来た。おお、上裸が眩しい。
「はい、おはようさん」
こちらを見ているのか定かでは無い深緑に苦笑しつつ跳ねた髪を撫でつけてやる。画面向こうではあんなにカッコイイ騎士様の、こんな無防備な姿を知っているのはきっと自分だけなのだろう。
ほのかな優越感に動かされ、白い額にキスを施す。
「……」
「……あー」
ただ、ただ、じ、っと見つめてくる瞳。
その視線と己の行為にじわじわと気恥ずかしくなって逃げを決める。
「は、腹減ってるか? 何か用意してくるから、早く顔洗って」
がしり。
言い訳は肩を掴む手で中断させられる。
「えっ、んわ!」
あっという間にベッドの中。
長く逞しい手足に拘束され、身動きができない。
「ムルソー⁉」
「もう少し……」
普段よりふやけた甘い声が耳を撫でる。
そしてすぐ届く、穏やかな寝息。
「……あーあ」
おーけーおーけー。わかったよ。
せっかくの休日なんだ。ランチの予定もあるから、あと一時間くらいは寝坊を許そう。
それで、起きたら。
たんと構ってくれよな。