Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ミヤシロ

    ベイXの短編小説を気まぐれにアップしています。BL要素有なんでも許せる人向けです。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 35

    ミヤシロ

    ☆quiet follow

    あと数時間で皆既月食が見られるので急遽考えたお話。96話『あの日の白星』の頃のシエルとバーン。
    9月8日未明~明け方に見られるそうです。私は間違いなく寝ていますね……。

    星降る夜 今日は十年ぶりの天体ショーの日だった。
    「神成シエル」
     トレーニングに励んでいるオレの許にバーンさんがやってくる。今日は会社の大事な会議があったはず、けれどバーンさんはふわりと笑って、
    「予定より早く終わった。それで君の顔を見に来たんだ」
     少しいいかな、と、バーンさんは訊く。オレは出来ればトレーニングを続けたかったけれど、この人を無碍にしたくはない。クロムさんを助けるために親身になって協力してくれる人だから……ちょっと胡散臭いな、って思ったり、すぐに抱きついてくるからぎょっとするけど。それでも頼りになる人で、温かくて。オレはバーンさんに‟いいですよ”と頷いた。
    「今夜は星がとても綺麗だ」
     ユグドラシル製薬の高層階に屋外に出られる場所があって、オレとバーンさんはそこで空を眺める。薄っすらと青みがかった闇の中を、青白い星が駆けていった。流れ星。今日は十年ぶりに流星群が見られる日だ。流れゆく星はとても眩しく、夜空に煌めいて一瞬のうちに消えていった。
    「綺麗ですね……本当に」
     ぼんやりと呟くオレは、子供の頃に聞いた話を思い出していた。
     流れ星に三回願い事を唱えると、願いが叶う。
     なんてことはない、ただの言い伝えだ。星に願ったところで実現するわけはない――願いを叶えるのは自分の意志だと思っている。練習を積み重ね、研究し、自分を信じて進んでいく。それだけだ。
     ただ、自分の力だけでは難しいこともたくさんあって。オレはクインさんや師匠、バーンさん……色んな人に助けられてここに居る。願いを願いで終わらせないために。クロムさんが帰るべき場所を守るために。
    「クロムさん……」
    「龍宮クロムも、この空を眺めているのだろうか」
     無意識のうちに呟いたオレに、バーンさんが懐かしいような、哀しいような声で言う。オレにとってクロムさんは憧れで、オレのすべてで。そしてバーンさんにとってもクロムさんは大切な存在だった。暗い場所に行ってしまったあの人にオレ達は想いを馳せる。美しい空に胸を締めつけられながら。
     クロムさん……。あなたも、オレと同じ空を見ていますか。
     流れ星は願い事を叶えないけれど、そう思わせる力を持つ。あなたはそんな星を瞳に映していますか。オレがあなたを想うように、あなたはオレ達のこと、時々は考えてくれていますか…?
     答はない。答えてくれる人はここには居ない。夜空は見事で、心を抉るほど冷たくて。
     オレは泣きたいのをこらえながら空を仰ぐ。沢山の人が天体観測を楽しむ空を、オレは睨むように見つめていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭😭😭😭🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ミヤシロ

    DONEあと数時間で皆既月食が見られるので急遽考えたお話。96話『あの日の白星』の頃のシエルとバーン。
    9月8日未明~明け方に見られるそうです。私は間違いなく寝ていますね……。
    星降る夜 今日は十年ぶりの天体ショーの日だった。
    「神成シエル」
     トレーニングに励んでいるオレの許にバーンさんがやってくる。今日は会社の大事な会議があったはず、けれどバーンさんはふわりと笑って、
    「予定より早く終わった。それで君の顔を見に来たんだ」
     少しいいかな、と、バーンさんは訊く。オレは出来ればトレーニングを続けたかったけれど、この人を無碍にしたくはない。クロムさんを助けるために親身になって協力してくれる人だから……ちょっと胡散臭いな、って思ったり、すぐに抱きついてくるからぎょっとするけど。それでも頼りになる人で、温かくて。オレはバーンさんに‟いいですよ”と頷いた。
    「今夜は星がとても綺麗だ」
     ユグドラシル製薬の高層階に屋外に出られる場所があって、オレとバーンさんはそこで空を眺める。薄っすらと青みがかった闇の中を、青白い星が駆けていった。流れ星。今日は十年ぶりに流星群が見られる日だ。流れゆく星はとても眩しく、夜空に煌めいて一瞬のうちに消えていった。
    1067

    ミヤシロ

    DONE89話『果たすべきこと』を見て思いついた話。🐉と🗡️でこんなやりとりがあったら面白そうだな、と。
    暑い日が続きますね。昨日は二十四節気の大暑でしたし、毎日本当に暑いです。

    追記
    7/19に広告を非表示にし、キャプションの文章を一部変更しました。
    広告がなくなると画面がさっぱりして、いいですね。
    魔龍と刃 暗い裏路地で着信を受けたクロムは、“そうか”と答えるのみであった。
     シエルの願いを受け入れも退けもせず、無感動な一言を掛けてすぐ通話を切った。シエルの声が聞こえなくなると辺りは静まり返り、無音が耳に痛いほどだ。クロムは嫌な静寂が垂れ込める世界に身を置いている。日の光がまともに射さず、彼の居場所は真昼にもかかわらず薄暗い――力を求めるあまり外道に堕ちた彼は、心のみならず身を潜める場所も闇に支配されていた。
     もっともクロムは冷淡に答えるも、彼の胸にはシエルの言葉が突き刺さっている。いじらしい少年はたとえどのような目に遭おうとクロムを慕い、ゆえに彼は少なくない呵責を覚えるのだった。神妙な顔で口を結び、青年は少年の言葉を反芻する。信念に支えられた発言は力強く、青年の帰還を切望する感情に溢れていた。
    2191