ストレリチアタビビトノキの花は青い極楽鳥花だ。
鳥の嘴のように細り尖った花弁が何枚も重なって一輪ができている。
もともとがシダ植物だから、タビビトノキ自体が巨大で硬質な構造を持つ。
そしてその花もやはり強い。
天を刺すように上を向いて咲く。
真冬でも威風堂々と日向で茂る。
その鮮やかさ、華やかさは、他の命を吸って生きているようだ。
自らを守るための強さは、周囲を蹂躙するかのごとく。
冬の極楽鳥花はひどく冷酷で、退屈で、孤独に見える。
ああ、
かわいそうな極楽鳥花。
大樹の洞、石碑前。
そこには逃げ場を求めた樹の民が集まっていた。
リチアが大樹の石化を解くと、いっせいに邪精霊タナトスが大樹から溢れ出し、空を赤黒く染めるほどの大群となって世界へと広がっていった。
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