生死一如「そういえば、親父さん連れてこないよな」
水木はアイスコーヒーに刺さったストローを噛みながら疑問を口にした。
対面では隻眼の少年が将棋盤に四白眼を向けている。紺のシャツと短パン(学童服というらしい)に寅じみたダンダラ縞のちゃんちゃんこという時代がかった出でだちはファミレスではかなり浮いているが、将棋とは妙にマッチしている。この席だけ時間がずっと昔に止まっているようだ。
少年――鬼太郎を改めて眺めるとそんな、水木らしくない文学的な感想が出てくるのが不思議だ。いや、と水木は思案する。鬼太郎は妖怪少年で、その中でも長命な幽霊族なのだから、文学的な―現実的でない―と思われることも、ともすると事実になってしまうのかもしれない。
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